個人再生で失敗しないためのポイントとは?
個人再生は、マイホームを手放すことなく借金を減額できる制度です。
債務整理の中でも借金の減額幅が大きいことから、多額の負債を抱えた人に適しており、自宅を持っている人には特にありがたい制度でしょう。
個人再生を申請したあとは、当然誰もが認可されることを望みます。しかし、中には不認可で失敗に終わってしまう人もいます。
では、個人再生が失敗するのはどのような理由によるのでしょうか?
ここでは、個人再生の失敗理由、成功するためのポイント、失敗後の対処法を解説します。
このコラムの目次
1.個人再生で失敗する4つのケース
個人再生の手続き中、何らかの理由で裁判所に「棄却」「廃止」「不認可」「取消」をされると、個人再生に失敗してしまいます。
(1) 棄却
個人再生の開始決定の要件は法律で定められており、その条件を満たさないと裁判所は再生手続きに進むことができません。
手続きに入る前に却下されることを「棄却」と言い、該当した場合は最初のステップで失敗に終わります。
民事再生法25条、221条により申立が棄却されてしまう例は以下の通りです。
- 再生手続きの費用を納めていない
- 再生計画案の作成、可決、再生計画の認可の見込みがないことが明らか
- 継続的、反復的な収入を得る見込みがない
- 不当な目的による申立である
- 住宅ローンを除く負債が5,000万円を超えている
(2) 廃止
個人再生の手続きが進むと、途中で債権者の「書面決議」というものがありますが(小規模個人再生の場合)、この際に以下に該当するときは再生計画が「廃止」となります。
- 債権者の過半数の同意を得られない
- 反対している債権者の総債権額が全体の債権額の1/2を超えている
- 財産目録に記載すべき財産が記載されていない、または不正な記載がされている
(3) 不認可
個人再生手続きで債権者の書面決議が可決されると、次は裁判所が認可をすべきかどうかを検討します。
この段階で裁判所が認めないと判断した場合は「不認可」となり、手続きは途中で終了します。
- 債権者一般の利益に反するとき
- 不正の方法によって決議が成立したとき
- 法律の規定に違反し、その不備が補正できないとき
- 最低弁済額の要件を満たしてないとき
- 「履行可能性テスト」で失敗したとき
(4) 取消
個人再生が裁判所に認可された後は安泰かと言えば、そうとは限りません。
一旦個人再生が認められても、その後「取消」となることもあります。
取消になるのは以下の2つのケースです。
- 再生計画が不正の方法で成立した
- 再生計画が計画通りに遂行されていない
以上のように、個人再生で失敗ポイントはいくつかあります。
では、個人再生で失敗しないためにはどうすればよいでしょうか。
2.個人再生を成功させるポイント
個人再生を成功させるためには、以下の点に十分気をつけて下さい。
(1) 継続的、反復的な収入を得る仕事に就く
個人再生では、認可した後に再生計画通りに返済できるかどうかを非常に重要視します。
その決め手となるのが「継続的、反復的な収入」の有無です。
継続的、反復的というと、正社員でなければと思いがちですが、アルバイトやパートでも認められます。
また、自営業者の場合は、3ヶ月に1度のペースで収入が見込める場合は、継続的、反復的であると認められる可能性が高いでしょう。
年金収入も基本的に認められますが、障害年金については将来的に回復する可能性があることから、障害の程度などによって個別に判断されます。
(2) 予納金や必要書類の提出期限を守る
個人再生の手続きにおいて、予納金や必要書類の期限を守ることは必須です。
期限までに実行されないときは、個人再生手続きは「廃止」になる可能性があるので十分注意してください。
特に、予納金については支払の目途がついてから申し立てを行うようにしましょう。
(3) 財産隠しなど不誠実な行動はしない
財産隠しは、個人再生の失敗(不認可)の代表的な理由の1つです。
個人再生は借金を大幅に減額する制度なので、債権者に大きな不利益を与えることになります。そのため、手続きに際しては、債権者に対して誠意を見せることが成功の鍵となります。
裁判所もその点については厳しい判断をしており、自分が損をしたくないばかりに、不正行為で相手にさらに不利益を与える行動をした場合は、即座に手続きは失敗となります。
(4) 個人再生認可後は再生計画通りに返済を行う
個人再生が認可されたあとは、必ず再生計画通りに返済を行いましょう。残債を全額返済するまでは「取消」の可能性は残っています。
せっかく真面目に計画通りに返済をしても、あと一歩のところで取消となれば、それまでの努力は水の泡になってしまいます。
返済が完了するまでは常に失敗のリスクがあることを念頭におきましょう。
3.個人再生で失敗した後の対処法
もし、個人再生の手続きで失敗した場合は、以下の4つの方法で対処できます。
(1) 再度個人再生を申請する
個人再生は申請の回数に制限がないので、一度失敗しても再度申請することができます。
個人再生に失敗した場合、原因を調べて問題をクリアできる見通しが立つ場合は、再チャレンジするのもありです。
例えば、債権者の同意を得られなかった場合は、債権者に反対した理由を聞き、同意を得られなかった部分を修正することで次回は成功する可能性があります。
また、申請を自分で行い失敗した場合は、弁護士に依頼をすることで成功するケースもあります。
(2) 給与所得者等再生を検討する
個人再生には二種類あり、基本的に「小規模個人再生」を選択するのが一般的です。
しかし、小規模個人再生は債権者の過半数の同意が必要で、同意を得られない場合はその時点で「廃止」となります。
この場合、給与所得者であれば、「給与所得者等再生」に切り替えることも可能です。
ただし、給与所得者等再生の場合は小規模個人再生よりも弁済額が高くなる可能性があります。
(それでも任意整理よりは減額幅は大きくなると予想されるので、検討に値する選択肢の1つです。)
(3) 任意整理をする
任意整理も、個人再生と同じく借金を減額する制度です。
個人再生に比べて減額幅は小さく、通常は任意整理で経済的再建ができない場合に個人再生を選択するので、個人再生が失敗に終わったから任意整理に切り替えるのは現実的ではありません。
しかし、例えば親族などからまとまった援助が期待できる場合は、任意整理をすることも可能です。
任意整理は将来利息をカットする形で借金を減額し、残りの元金を3~5年かけて返済していきます。
(4) 自己破産する
個人再生が失敗に終わったとき、最も現実的なのは自己破産の選択です。
自己破産は、ほとんど全ての借金を帳消しにします。借金額が大きい場合(個人再生は、住宅ローンを除いた債務額が5,000万円以上の場合は申立てが「棄却」されてしまいます)や継続的な収入がない場合は、自己破産を選択することをお勧めします。
自己破産する場合は、マイホーム等高価な財産は没収されてしまう点にご注意ください。
もっとも、この場合でも生活用品等日常生活で必要な最低限のものは処分されません。
債務整理の各手続きについて、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
[参考記事]
借金問題の解決は川崎市の弁護士へ相談を
4.個人再生を成功させるには弁護士に相談を
個人再生は住宅を失うことなく借金を大幅に減額できる制度ですが、個人再生がベストの選択であるかどうかは人によります。
どの制度が良いかは、各人の負債額、収入、財産の有無で変わるので、個人再生の手続きをするにしても、メリットとデメリットを知って、他の制度とも比較をしましょう。
そして、仮に個人再生が適切であると判断した場合、個人再生は手続きが複雑なので、認可されるまでに手続きで躓くケースは少なくありません。
また、認可後も再生計画通りに弁済できない場合は取消をされる可能性もあります。
個人再生が失敗に終わった場合は、借金は債務整理前の状態に戻るので、それまでの努力が全て水の泡になってしまいます。そうなったら一大事です。
要件を満たしているか十分検討し、専門家と相談をした上で申し立てをすれば成功の確率は上がります。
泉総合法律事務所では個人再生の実績が豊富にございますので、個人再生をするべきかどうかお悩みの方に、成功させるための方法を含め、ベストの解決策を提示させて頂くことが可能です。
相談は何度でも無料ですので、どうぞお気軽にご相談ください。
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