債務整理

自己破産しても離婚慰謝料や養育費、婚姻費用の支払い義務はある!?

自己破産手続をすれば、原則として消費者金融などからの借金返済を含む金銭支払義務、つまり「債務」(債権者から見れば「債権」)が全て免除されることになります。

別居中の婚姻費用や、離婚で支払うことになってしまった慰謝料、子どもがいれば別居中または離婚後に支払う必要がある養育費も、法律の上では債務です。

しかし、婚姻費用や養育費は、自己破産をしても支払わなければなりません。
慰謝料も、離婚の原因次第では、免除されないことがあります。

このコラムでは、別居や離婚などと自己破産のタイミングに応じて

  • 婚姻費用や養育費の自己破産手続の中での扱い
  • 養育費などの支払いについて、自己破産と関連して注意すること
  • 離婚による慰謝料が免除される場合とされない場合の違い

などについて、わかりやすく説明します。

1.婚姻費用や養育費は自己破産で無くならない!

自己破産手続は、支払いきれない借金を、財産のほとんどを債権者に配当する代わりに、裁判所が、支払わないで済むようにしてくれる債務整理手続です。

自己破産により借金が免除されることは「免責」、裁判所が免責を決定することを「免責許可決定」と言います。

しかし、婚姻費用や養育費は、たとえ免責許可決定がされても、支払義務が無くなりません
その理由は、婚姻費用や養育費を支払わなければならない時期が、自己破産手続が始まる前か後かで異なります。

さらに、手続前に支払わなければならなったのに支払っていなかった、滞納している養育費などについては、注意をしなければ、自己破産に悪影響が生じる可能性があります。

(1) 支払時期が手続の開始よりあとの婚姻費用や養育費

破産手続開始決定後に支払うこととなっていた婚姻費用や養育費は、そもそも自己破産手続の対象となりません。

自己破産の手続は、債務者の申立てを受けた裁判所が、手続開始決定をすることで始まります。

自己破産手続で対象となる、つまり、免除される可能性がある債務は、手続開始決定よりも前にあったものに限られます。
手続開始決定のあとに支払うと約束していた債務は、約束をした時が免責許可決定の前でも、手続の対象になりません。

ですから、手続開始決定のあとの時期に支払日が来る婚姻費用や養育費は、自己破産とは関係なく、支払わなければならないものなのです。

幸い、債権者への配当のため裁判所に没収されてしまう財産も、原則として、手続開始決定のときの物に限られ、それ以降に新しく手に入れた財産は没収されません。

手続開始決定以降の給料などで、養育費などを支払いましょう。

なお、次に説明する滞納した養育費などでは、支払うこと自体に問題が出てしまうこともありますが、手続開始後の養育費などについては、将来について何年分もまとめて支払わない限り、その問題はありません。

そういっても、その問題って何?とお思いでしょう。滞納しているものについての説明にさっそく移ります。

(2) 手続開始の時点で滞納している婚姻費用や養育費

自己破産手続開始決定前に支払わなければならなかった婚姻費用や養育費を支払っていなかった場合、その支払義務は自己破産手続の対象になります。

しかし、婚姻費用や養育費は、免責許可決定がされても、支払義務が無くなりません。手続後にしっかりと支払う必要があります。

普通、自己破産手続の対象となった債務は、免責許可決定により、支払わないでよくなります。
ところが、法律は、自己破産手続の対象になるのに、免責許可決定がされても支払義務が無くならない債務を決めています。

このような債務は、非免責債権と呼ばれています。

法律用語のため紛らわしいですが、債権は他人にお金を要求する権利、つまり、債務の裏返しです。

非免責債権は「税金や社会保険料など」、「損害賠償金のうち、免除すべきとは言えない一部のもの」、などがありますが、その中でも、「家族関係を理由に請求できる権利」に、婚姻費用や養育費が含まれます。

そのため、婚姻費用や養育費は、自己破産手続の対象となるのに、免除がされないのです。

ところが、面倒なことに、自己破産手続の対象となる以上は、自己破産手続のルールに関して注意が必要になってきます。

2.婚姻費用や養育費の支払いで注意すること

滞納した養育費などは、免除されないとはいえ、手続の対象になっています。
そのため、自己破産手続をするうえで守らなければならないルールの影響を受けます。

そのルールに違反すると、自己破産に失敗する、そこまでいかずとも、自己破産するための費用や手間の負担が重くなることがあります。

(1) 自己破産手続中に滞納した養育費などを支払わない

滞納している婚姻費用や養育費について、債務者が支払えるのも債権者が請求できるのも、手続が終了してからです。

手続中に手続の対象となっている債務を支払うことは、法律で禁止されています。

手続中は債務者が支払うことは原則出来ませんし、債権者が訴訟で請求することも出来ません。

(2) 手続前に養育費をまとめて支払わない

相手から「養育費はちゃんと全部支払ってよ!」と要求され、それに応じてまとめて支払ってしまった場合、免責されないリスクが生じますし、また、手続負担が重くなってしまいます。

ちなみに、滞納した養育費はもちろん、将来の養育費についても、何年分もまとめて支払ってしまうと、同じ問題が生じます。

(3) 禁止された偏頗弁済を行なった場合のリスク

自己破産手続は、公的機関である裁判所による債務整理手続ですので、債権者を公平に取り扱うことが原則となります。
これを「債権者平等の原則」と言います。

債権者平等の原則に反して、特定の債権者にだけ優先的に支払うことは、「偏頗弁済」と呼ばれ、禁止されています。

偏頗弁済は、借金を免除するには不適切な事情、法律上、免責不許可事由と言われるものの一つにもなっています。

①養育費以外の借金も免除されなくなるおそれ

免責不許可事由があると、裁判所は、その調査を行う破産管財人を選任します。破産管財人の報告を受けた裁判所は、債務者の事情一切を検討して、免責すべきか判断します。
この制度は「裁量免責制度」と呼ばれています。

ほとんどの場合は、免責不許可事由があっても裁量免責がされますから、借金が免除されないことを極端におそれることはありません。

しかし、破産管財人にウソをついて、養育費をまとめて支払ってしまったことを隠すなど、不適切な態度を重ねれば、本当に免責されないこともありえます。

そうなれば、養育費など以外の普通の借金なども全て免除されません。

②手続の負担が重くなる

破産管財人が選任される自己破産手続の種類は、管財事件と呼ばれています。

管財事件によって自己破産をするには、申立てのときに20万円から50万円もの破産管財人の報酬の前払いが必要です。
破産管財人からの要求に応じて対応する手間も増えます。

破産管財人は、債務者の財産を債権者に配当するためにも選任されますから、もともと財産が多くある場合はどのみち負担は変わりません。

しかし、もし、財産や他の免責不許可事由がないのに、養育費をまとめて支払ったために管財事件となってしまった場合は、大きな損をすることになります。

破産管財人を選任する必要が無い場合は、同時廃止という手間も費用も比較的軽い手続が利用できたはずだからです。

【養育費をまとめて支払っても意味がない】
破産管財人は、偏頗弁済をした相手方債権者にその返還を求めることができます(否認権の行使と呼ばれています)。
養育費をまとめて支払っても、破産管財人は否認権を行使して支払ったお金を相手から取り戻すでしょう。
あなた自身や相手の負担を無駄に大きくするだけの結果に終わることになるのです。

3.離婚による慰謝料支払いの判断

離婚による慰謝料請求権が免責されるかどうかは、離婚の原因によって異なります。

離婚による慰謝料請求権は、法律上、自動車事故などの場合と同じ「不法行為に基づく損害賠償請求権」の一つですが、不法行為に基づく損害賠償請求権が免責されない場合は、以下の二つの場合に限られているからです。

(1) 不法行為に基づく損害賠償請求権が免責されない場合

①故意・重過失により相手の生命・身体に損害を与えた場合

そうなるとわかって、またはひどい不注意で、他人の命を奪ってしまった場合や、けがをさせてしまった場合です。

②悪意で相手に損害を与えた場合

悪意とは、積極的に相手に損害を与える意思を言います。悪意がある場合には、損害は生命や身体に限られません。

なお、この損害賠償請求権も、滞納した養育費などと同じように、自己破産手続の対象にはなっています。

偏頗弁済など、先ほど説明した注意点には気を付けてください。

(2) 離婚による慰謝料が免責される場合

例としては、浮気による離婚の際の慰謝料請求権が挙げられます。

一般的には、浮気は結婚相手を積極的に害するためにされるものではありませんし、身体などに対する侵害とも言えないからです。

(3) 離婚による慰謝料が免責されない場合

離婚の原因がDVによる場合は、慰謝料請求権が免責されることはありません。

暴力が振るわれていれば身体に対する侵害と言えますし、暴言によるものでも悪意で相手に精神的損害を与えたと言えるからです。

4.自己破産を検討されている方は泉総合法律事務所へ

自己破産手続を検討せざるをえないほど、借金の返済に行き詰まってしまっている場合、家庭内に亀裂が生じてしまい、別居や離婚に至ってしまうこともあるでしょう。

そのようなときに新たに生じる婚姻費用や養育費、慰謝料などの金銭問題が、自己破産手続によりどのような影響を受けるか、逆に、手続にどのような影響を与えかねないのかについては、個別の事情を専門的な知識や経験に基づいて分析しなければなりません。

そのため、専門的な知識を持たない方が単独で手続を行うべきではなく、自己破産など債務整理に精通した専門家である弁護士に依頼し、助言を受けることが必要不可欠です。

泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を自己破産手続で解決してきた豊富な実績があります。

借金問題だけでなく、家庭にも問題が生じてしまっている皆様のご相談をお待ちしております。

無料相談受付中! Tel: 0120-700-496 平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
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