債務整理

自己破産手続における慰謝料、婚姻費用、養育費等の扱いについて

自己破産手続における婚姻費用や養育費、慰謝料の扱いについて

自己破産手続を利用すれば、原則として消費者金融などからの借金返済を含む金銭支払義務、つまり「債務」(債権者から見れば「債権」)が全て免除されることになります。

しかし、実は自己破産をしても支払義務から解放されないものがあります。

その中には、別居中に配偶者に支払わなければならない婚姻費用や、離婚後支払うこととなった養育費、場合によっては離婚の慰謝料も含まれます。

このコラムでは、自己破産手続における婚姻費用養育費慰謝料が免除されるのかどうか、手続によるそれらの支払への影響などについて説明します。

1.自己破産の基本

自己破産手続は、支払不能となった債務者が、裁判所を利用して、自らが持つほとんどの財産を債権者へ配当することを代償に、借金などの債務を免除してもらう債務整理手続です。

自己破産により債務が免除されることを免責と言い、裁判所が免責を決定することを免責許可決定と言います。

婚姻費用や養育費、慰謝料に関して問題となる自己破産の基本を以下で説明します。

(1)自己破産手続の種類

①管財事件

債務者が債権者に配当できるだけの財産を持っている場合や、免責が原則許されないとされている事情(免責不許可事由と言います。)がある場合には、裁判所は管財事件という手続で自己破産手続を行います。

管財事件では、配当手続の処理や免責不許可事由の調査を行う破産管財人が選任されます。

②同時廃止

債務者に財産も免責不許可事由もない場合には、破産管財人が選任されない手続である同時廃止が用いられます。

破産管財人の報酬が不要であり、手続も省略されるので、管財事件よりも費用負担が軽く、一般的には手間も少ない手続です。

(2) 債権者平等の原則

自己破産手続は、公的機関である裁判所による債務整理手続ですので、債権者を公平に取り扱うことが原則となります。

これを債権者平等の原則と言います。

そのため、自己破産手続が始まると、債務者の財産に対する差押えは中止され、特定の債権者が抜け駆けして債権を回収することは出来なくなります。

(3) 偏頗弁済

債権者平等の原則は免責不許可事由にもかかわります。その一つが、「偏頗弁済」という免責不許可事由です。

偏頗弁済とは、特定の債権者にだけ優先的に支払いをすることです。

偏頗弁済は、他の債権者への配当を減らしてしまう債権者平等の原則に反するものですから、免責不許可事由になっています。

また、破産管財人は、偏頗弁済をした相手方債権者にその返還を求めることができます(否認権の行使と呼ばれています。)。

なお免責不許可事由があっても、よほど悪質でない限り、裁量免責と言って、裁判所が債務者の事情一切を検討して、免責を認めています。

2.自己破産手続により免責されない借金

自己破産手続であらゆる借金が免責されるわけではありません。

なかでも養育費慰謝料に関して問題となるのは、以下の二つです。

(1) 自己破産手続開始決定後の借金

自己破産手続対象となり免責される可能性がある借金は、裁判所が自己破産手続を始めると決定したときよりも前にあったものに限られます。

自己破産手続開始決定後に生じた借金は、免責許可決定前のものでも手続の対象になりません。

債権者に配当される債務者の財産も、同様に自己破産手続前のものに限られますので、債務者は手続開始後に受け取った給料などで返済をすることになります。

(2) 非免責債権

自己破産手続開始決定前の借金であっても、免責許可決定により支払負担が免除されないものがあります。

これを、非免責債権と呼びます。

非免責債権の中でも、婚姻費用や養育費、慰謝料に関しては、

  • 親族関係に基づく扶養費用の請求権
  • 一部の不法行為に基づく損害賠償請求権

が問題になります。

それでは、養育費や慰謝料についての具体的な扱いを見ていきましょう。

3.婚姻費用や養育費

結論から言えば、婚姻費用や養育費は、いかなる場合であっても、免責されることはありません。

しかし、その理由や具体的な対応は、婚姻費用や養育費の支払時期が自己破産手続開始決定の前か後かで異なります。

(1) 支払時期が自己破産手続開始決定の前の場合

自己破産手続開始決定前に支払わなければならなかった婚姻費用や養育費を支払っていなかった場合、その支払義務は自己破産手続の対象になります。

しかし、婚姻費用や養育費は、非免責債権の一つである親族関係に基づく扶養費用の請求権です。

そのため免責許可決定の後も、支払義務は残ってしまいます。

ただし、自己破産手続の対象になることにより、婚姻費用や養育費の支払に影響が出ます。

①自己破産手続開始決定前の差押えの中止

結果的に免責されないとはいえ、自己破産手続の対象になる以上、滞納している婚姻費用や養育費についても債権者平等の原則が及びます。

そのため婚姻費用や養育費が未払いであることを理由に、給料などが差押えられていた場合には、いったんその差押えは中止されます。

②自己破産手続中の支払や請求の禁止

これも債権者平等の原則が理由です。

滞納している婚姻費用や養育費について、債務者が支払えるのも債権者が請求できるのも、手続が終了してからです。

手続中は債務者が支払うことは出来ませんし、債権者が訴訟で請求することも出来ません。

③将来の養育費をまとめて支払うと偏頗弁済に当たるリスク

相手から「借金を支払えないならせめて養育費だけでも全部支払ってくれ」と要求され、それに応じてまとめて支払ってしまった場合、偏頗弁済に当たる恐れがあります。

そうなると、免責不許可事由があることになり免責されないリスクが生じますし、また、管財事件で手続をするために手続負担が重くなってしまいます。

あげく破産管財人は否認権を行使して支払った将来養育費相当額を取り戻すでしょうから、無駄に負担を大きくするだけの結果に終わりかねません。

(2) 支払時期が自己破産手続開始決定の後の場合

自己破産手続開始決定後に支払うこととなっていた婚姻費用や養育費は、そもそも自己破産手続の対象となりません。

そのため、上の①~③のような影響を自己破産手続から受けることはありませんので、手続き終了後に支払うこととなっているものはもちろん、手続期間中に支払わなければならないものも、変わりなく支払う必要があります。

もし支払わなかった場合には、給料などを差押えられてしまうこともあり得ます。

4.離婚による慰謝料

離婚による慰謝料請求権が免責されるかどうかは、離婚の原因によって異なります。

離婚による慰謝料請求権は、法律上、自動車事故などの場合と同じ「不法行為に基づく損害賠償請求権」の一つですが、不法行為に基づく損害賠償請求権が免責されない場合は、以下の二つの場合に限られているからです。

(1) 不法行為に基づく損害賠償請求権が免責されない場合

①故意・重過失により相手の生命・身体に損害を与えた場合

そうなるとわかって、またはひどい不注意で、他人の命を奪ってしまった場合や、けがをさせてしまった場合です。

②悪意で相手に損害を与えた場合

悪意とは、積極的に相手に損害を与える意思を言います。

悪意がある場合には、損害は生命や身体に限られません。

なお、自己破産手続の対象にはなるため、すでに説明した上記①~③の影響を受けます。

(2) 離婚による慰謝料が免責される場合

例としては、浮気による離婚の際の慰謝料請求権が挙げられます。

一般的には、浮気は結婚相手を積極的に害するためにされるものではありませんし、身体などに対する侵害とも言えないからです。

(3) 離婚による慰謝料が免責されない場合

離婚の原因がDVによる場合は、慰謝料請求権が免責されることはありません。

暴力が振るわれていれば身体に対する侵害と言えますし、暴言によるものでも悪意で相手に精神的損害を与えたと言えるからです。

5.自己破産を検討されている方は泉総合法律事務所へ

自己破産手続を検討せざるをえないほど、借金の返済に行き詰まってしまっている場合、家庭内に亀裂が生じてしまい、別居や離婚に至ってしまうこともあるでしょう。

そのようなときに新たに生じる婚姻費用や養育費、慰謝料などの金銭問題が、自己破産手続によりどのような影響を受けるか、逆に、手続にどのような影響を与えかねないのかについては、個別の事情を専門的な知識や経験に基づいて分析しなければなりません。

そのため、専門的な知識を持たない方が単独で手続を行うべきではなく、自己破産など債務整理に精通した専門家である弁護士に依頼し、助言を受けることが必要不可欠です。

泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を自己破産手続で解決してきた豊富な実績があります。

借金問題だけでなく、家庭にも問題が生じてしまっている皆様のご相談をお待ちしております。

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