債務整理

自己破産しても離婚慰謝料や養育費、婚姻費用の支払い義務はある!?

自己破産手続をすれば、消費者金融等からの借金を含む金銭の支払義務、つまり金銭債務は、「原則として」全て免除されることになります。

しかし、「原則として」と言ったのは、その例外が存在するからであり、例えば、夫婦間の婚姻費用や子どもの養育費の滞納分については、自己破産をしても、支払義務は免除されません。
また、離婚の際の慰謝料も、離婚の原因次第では、例外的に免除されないことがあります。

別居中の婚姻費用や、離婚で支払うことになってしまった慰謝料、子どもがいれば、別居中または離婚後に支払う必要がある子どもの養育費等は、いずれも、その性質が金銭債務であることは、一般的な借金と何ら変わりありません。
それにも関わらず、これらについて支払義務が免除されないのは(つまり、破産による債務の免除の効果が及ばないのは)何故なのでしょうか。

このコラムでは、婚姻費用や養育費の自己破産手続の中での扱いや、離婚による慰謝料が免除される場合とされない場合の違いなどについて、説明します。

1.自己破産とは

自己破産手続は、負債が支払不能の状態にある債務者が裁判所に破産申立てを行ない、支払いきれない債務を原則として全額免除してもらう債務整理手続です。

代わりに、債務者の手持ちの価値ある財産のほとんどは処分され、債権者に配当されます(ただし、99万円以下の現金や、生活必需品など、一定の範囲の財産については、「自由財産」として、破産しても手元に残すことができます)。

手続の流れとしては、債権者に財産の配当を行なった上で、配当後なお返しきれない債務について、裁判所に支払義務の免除を求めるのです。

自己破産により借金が免除されることを「免責」と言い、裁判所が免責を決定することを「免責許可決定」と言います。

普通、自己破産手続の対象となった金銭債務は、裁判所が出す免責許可決定により、支払義務が全て免除になります。
ところが、破産法では、自己破産手続の対象にはなるものの、免責許可決定がされても例外的に支払義務が免除されない債務を、明文で定めています(破産法253条1項各号)。このような債務は「非免責債権」と呼ばれています。

税金や社会保険料等の公租公課が非免責債権の代表例ですが、夫婦間の婚姻費用や子どもの養育費もまた、非免責債権の1つとして定められています。

すなわち、婚姻費用や養育費は、婚姻者や子どもが生活をしていくために必要不可欠なものであり、その支払いが免除されてしまうと、相手方の蒙る生活上の不利益が多大なものになるため、免責が認められていないのです。

したがって、婚姻費用や養育費については、たとえ免責許可決定が出されても、支払義務は免除されません

さらに、自己破産手続前から滞納している養育費等については、注意をしなければ、自己破産自体に悪影響が生じる可能性があります。

自己破産をしても無くならない債権とは?

[参考記事]

自己破産をしても無くならない債権とは?(非免責債権)

2.自己破産と婚姻費用・養育費の関係

婚姻費用・養育費の扱いは、婚姻費用や養育費を支払わなければならない時期が自己破産手続の始まる前か後かで異なります。

(1) 手続開始の時点で滞納している婚姻費用・養育費

破産手続開始決定前に支払わなければならなかった婚姻費用や養育費を支払っていなかった場合、つまり、滞納分の婚姻費用・養育費に関しては、その支払義務は、破産手続の対象になります(手続の対象になるということは、債権者として破産手続に参加し、債務者の財産の配当を受けられるということです)。

しかし、前述の通り、婚姻費用や養育費は法律で非免責債権とされていますので、一般的な債務と異なり、婚姻費用や養育費の滞納分については、免責許可決定が出されても、支払義務は一切免除されません
破産手続の終了後にきちんと支払う必要があります。

なお、上記のとおり、婚姻費用や養育費の滞納がある場合、その債権者も破産手続に参加させる必要があるので、破産しても結局債権者への支払義務が無くならないからといって、債権者に破産手続開始の事実を通知しない(裁判所に債権者として申告をしない)ことは許されません。

(2) 支払時期が手続の開始より後の婚姻費用・養育費

破産手続開始決定の時点より後に支払うことになっている婚姻費用や養育費は、そもそも、自己破産手続の対象となりません

自己破産手続で対象となる債務、つまり、債務者の財産から配当を受け、配当後に残った分について免責される可能性がある債務(及び非免責債権に該当するか否かの検討が必要になる債務)とは、原則、破産手続開始決定前の原因に基づいて発生した債務に限られます。

逆に、破産手続の中で処分・配当の対象となる債務者の財産も、原則、破産手続開始決定の時点で保有する財産を基準に判断され、破産手続開始決定より後に債務者が得た財産(新得財産)は、そもそも破産手続とは無関係な財産として扱われます。

これに対し、破産手続開始決定の時点より後に支払うと約束していた債務は、約束をした時点が免責許可決定より前であったとしても、手続の対象になりません。

例えば、「子どもが20歳になるまで月額10万円の養育費を毎月末日に支払う」という約束をした場合の、支払日が未到来の養育費については、債権者は、毎月の支払日が到来する毎に1か月分の養育費しか債務者に支払いを請求できません。
これを債務者の立場から見れば、債務者には、既に支払日が到来している範囲でしか、債権者に対する養育費の支払義務がそもそも発生していないわけです。

ですから、破産手続開始決定より後の時期に支払日が到来する婚姻費用や養育費は、自己破産手続とは関係なく、元々決められた期日までに、約束通り支払わなければならないものなのですので、破産手続の中で処分・配当の対象から外れた現金等(自由財産)や、破産手続開始決定以降の給料(新得財産)などから費用を工面して、養育費等を支払いましょう。

3.婚姻費用や養育費の支払いで注意すること

前述の通り、滞納した養育費などは、支払義務が免除されないとはいえ、破産手続の対象自体にはなっています。

ところが面倒なことに、自己破産手続の対象となる以上は、自己破産手続のルールに関して注意が必要になってきます(自己破産手続をするうえで守らなければならないルールの影響を受けます)。

そのルールに違反すると、自己破産に失敗する(免責が不許可になる)リスクが生じ、また、自己破産するための費用や手間の負担が重くなることがあります。

(1) 滞納した養育費などを破産手続中に支払わない

破産手続後も支払義務が残るとは言え、滞納している婚姻費用や養育費について債務者が債権者に直接支払えるのも、また、債権者が債務者に直接請求できるのも、破産手続が終了した後の話です。

破産手続の係属中に、破産手続の対象となっている債務を破産手続の外で支払うことは、法律で禁止されています。

破産手続の対象となる債務に関しては、全て破産手続の中で(配当手続を通じて)平等に支払いを受けるべきものであり、破産手続を無視して特定の債権者に不公平な支払いを行なうことは許されていません。

(2) 手続前に養育費をまとめて支払わない

相手から「自己破産するにしても、養育費はちゃんと全額支払ってよ!」と要求され、それに応じてまとめて支払ってしまった場合、免責されないリスクが生じます。

滞納した養育費はもちろん、将来の養育費についても、何年分もまとめて支払ってしまうと同じ問題が生じますのでご注意下さい。

なお、前述の説明を読んで、「支払日が未到来の養育費については、破産手続と関係なく支払わないといけないと書いてあったのだから、将来の養育費を纏めて支払っても別に問題ないのでは?」と誤解される方もいらっしゃるかも知れませんが、将来の養育費を纏めて支払うということは、そもそも現時点で支払う必要がない債務を本来は債権者への配当に充てるべき現時点の財産を使って支払うことを意味しますから、やはり、他の債権者の利益を害し、債権者間の平等を損なう行為です。

【禁止された偏頗弁済を行なった場合のリスク】
自己破産手続は、公的機関である裁判所による債務整理手続ですので、債権者を公平に取り扱うことが原則となります。これを「債権者平等の原則」と言います。
債権者平等の原則に反して、特定の債権者にだけ優先的に支払うことは、「偏頗(へんぱ)弁済」と呼ばれ、禁止されています。
偏頗弁済は、免責不許可事由と言われるものの一つにもなっており、これを行なってしまうと、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
・養育費以外の借金も免除されなくなる(免責不許可決定となる)恐れ
養育費をまとめて支払ってしまったことを隠すなど、不適切な態度を重ねれば、普通の借金なども全て免除されないかもしれません。
・手続の負担が重くなる
特に配当できるような財産が無い場合でも、債務者に免責不許可事由があると、原則として、自己破産手続は「管財事件」として取り扱われます。管財事件となってしまった場合、手間も費用も多くかかってしまいます。

4.離婚による慰謝料支払いの判断

前述の婚姻費用や養育費が、その性質上、全て非免責債権となるのに対し、離婚による慰謝料請求権が破産手続で免責されるかどうか(非免責債権に該当するか否か)は、離婚の原因によって異なります。

すなわち、離婚による慰謝料は、自動車事故の賠償金等と同じく、「不法行為に基づく損害賠償請求権」の一つという位置づけですが、不法行為に基づく損害賠償請求権が非免責債権となるのは、法律上、以下の二つのいずれかに該当する場合に限られているからです。

①故意・重過失により相手の生命・身体に損害を与えた場合

そうなるとわかって、またはひどい不注意で、他人の命を奪ってしまった場合や、怪我をさせてしまった場合です。

例えば、交通事故で加害者が被害者の生命や身体を害したところ、加害者が自己破産をした場合、債務者たる加害者の故意または重過失が認められれば、加害者の被害者に対する損害賠償債務は、免責の対象外となります。

②悪意で相手に損害を与えた場合

「悪意」とは、積極的に相手に損害を与える意思を言います。債務者たる不法行為者に悪意がある場合には、非免責となる損害は、生命や身体に限られません。

(1) 離婚による慰謝料が免責される可能性が高い場合

免責される可能性が高い例としては、浮気・不倫による離婚の際の慰謝料請求権が挙げられます。

一般的には、浮気や不倫は、結婚相手に積極的に損害を与える意思(害意)でされるものではありませんし、また、当然、結婚相手は精神的なダメージを受けるでしょうが、結婚相手の生命・身体を侵害しているとも言えないからです。

(2) 離婚による慰謝料が免責されない可能性が高い場合

例えば、離婚の原因がDV(家庭内暴力)による場合は、慰謝料請求権が免責されない可能性が高くなります。

暴力が振るわれていれば、相手の身体に対する侵害と言えますし、暴言によるものでも、悪意で相手に精神的損害を与えたと言える可能性が高いからです(暴言が原因で相手に精神的な疾患が生じていれば、相手の身体に対する侵害とも評価できるでしょう)。

なお、「可能性」という言い方を敢えて使ったのは、本来、ある損害賠償債務が非免責債権に該当するか否かということは、当事者(債権者及び債務者)が勝手に決められる問題ではないのは勿論、破産事件を担当する裁判所が、破産手続の中で結論を出すものでもないからです。

非免責債権か否かの問題が顕在化するのは、破産手続が終了し、免責許可決定が出たにも関わらず、債務者が債権者から請求を受けた場面であり、非免責債権か否かの最終結論を出すのは、その紛争を扱うことになった裁判所です。

そのため、破産手続の時点で、「悪意」や「重過失」といった評価が争われる余地のある損害賠償債務について、絶対に非免責債権になる(ならない)と決めつけてしまうのは危険です。

5.自己破産を検討されている方は泉総合法律事務所へ

自己破産手続を検討せざるを得ないほど借金の返済に行き詰まってしまっている場合、家庭内に亀裂が生じてしまい、別居や離婚に至ってしまうこともあるでしょう。

そのようなときに新たに生じる婚姻費用や養育費、慰謝料などの金銭問題が、自己破産手続によりどのような影響を受けるか、逆に、破産手続にどのような影響を与えかねないのかについては、個別の事情を専門的な知識や経験に基づいて分析しなければなりません。

そのため、専門的な知識を持たない方が単独で手続を行うべきではなく、自己破産など債務整理に精通した弁護士に依頼し、破産や離婚のタイミングなどの助言を受けることが必要不可欠です。

泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を自己破産手続で解決してきた豊富な実績があります。
借金問題だけでなく、家庭にも問題が生じてしまっているも、どうぞご遠慮なくご相談下さい。

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