ソシャゲのガチャ課金で借金をしてしまった学生が自己破産をする方法
自己破産手続は、借金を支払えなくなってしまった人が、裁判所に申立てをして、目安として20万円以上の財産を債権者に配当する代わりに、原則として全ての借金の返済義務などの金銭支払義務、つまり「債務」(債権者から見れば「債権」)を免除してもらう手続です。
最近では、学生でも借金で自己破産手続をする人が少なくありません。
その原因の一つが、スマホで遊べるソシャゲの課金です。
アイテム課金もそうですが、特にガチャはそのギャンブル性から、止めるに止められなくなってしまい、高額の借金が残ることもあります。
ネット上では、ソシャゲの課金は自己破産で無くすことができないというウワサもありますが、そんなことはありません。
このコラムでは、学生の方が、ガチャ課金による借金を無くすために、自己破産手続をする場合について説明します。
このコラムの目次
1.ガチャによる借金でも自己破産はできる
自己破産手続により借金が無くなることを免責と言い、裁判所が免責を決定することを免責許可決定と呼びます。
自己破産の申立てが認められれば、必ず免責許可決定がされるわけではありません。
特に原則として免責が認められないとされる免責不許可事由がある場合には、免責不許可決定が出され、財産が処分されたのに借金が残ることもあります。
ガチャによる借金が自己破産で免責されないといわれているのは、ガチャは免責不許可事由の代表例であるギャンブルに該当するからです。
なお、アイテム課金も免責不許可事由である浪費に該当するでしょう。
しかし、極端に心配する必要はありません。なぜなら、免責不許可事由の規定とセットで、「裁量免責制度」という救済制度があるからです。
裁判所は、免責不許可事由があったとしても、その他の一切の事情も考慮して、免責を認めてくれます。この裁量免責制度が活用されているため、法律の規定ぶりとは異なり、免責不許可事由があったとしても、ほとんどの場合は免責されています。
ガチャで借金をしてしまったというだけで、裁量免責が認められない可能性はかなり低いでしょう。
ただし、免責不許可事由がある以上は、免責されないリスクがあることは間違いありません。
2.免責されるためのポイント
裁判所は、
- ガチャで借金をしたことを反省しているか
- 反省を態度で示しているか
- ガチャ以外に悪質な免責不許可事由がないか
といった点を特に重視しています。
ですから、以下のことに注意しましょう。
(1)手続中は倹約に努め、家計簿をつけて提出する
免責不許可事由があると、裁判所は管財事件という自己破産手続の種類で手続を行います。
管財事件では、免責不許可事由の調査を行う破産管財人が選任されます。
破産管財人は、手続開始早々に債務者と面談して聞き取り調査を行い、ギャンブルや浪費など生活に問題があれば、定期的に面談をして家計簿を提出させ、生活状況を確認します。
ですから、手続中は決してソシャゲで課金を行わず、倹約に努めてください。
ガチャを再度してしまえば、借金の原因を取り除けておらず、反省していないと判断されかねません。
なお、自己破産してから7年以内に再度自己破産すること自体、免責不許可事由になります。まして、原因が同じともなれば、裁判所の目は非常に厳しくなります。
(2)手続に誠心誠意協力する
裁判所や破産管財人に対して、財産や免責不許可事由の調査、配当手続に協力することが法律上義務付けられています。
そして、手続に協力しないこと自体が免責不許可事由になります。
手続への協力姿勢は、債務者の反省が本物かどうかを見極める重要な要素です。何らかの違法不当行為があったとしても、正直に事実を説明し、手続の進行に丁寧かつ迅速に協力すれば、裁量免責のためにはむしろプラスになります。
(3)財産や債権者は正直に申告する
自己破産手続により借金がなくなれば、債権者であるサラ金や通信会社などは、大損害を受けます。
その損害を抑えるため、財産があれば配当する必要があるのです。
債権者を守るため、自己破産手続では配当手続は非常に重要視されています。財産を隠したりすることは、悪質な免責不許可事由となり、免責されない恐れが非常に高くなります。
しかも、犯罪にもなりかねません。
また、自己破産手続では、債権者を公平に扱うという債権者平等の原則がありますので、借金のある友人を申告せず、返済を続けるようなことはしないでください。
(4)手続前に財産を下手に動かさない
手続前に財産を他人に譲ることは、詐害行為と呼ばれる免責不許可事由になっています。
また、特定の債権者にだけ返済すると、偏頗弁済という免責不許可事由になります。
高額品を売り払ってガチャの借金を穴埋めしようとしたり、友人にだけ借金を返済したりすると、詐害行為や偏頗弁済とされるリスクが生じます。
3.自己破産手続をするうえで注意すべきことと対策
自己破産手続には、免責不許可事由以外にもいろいろなデメリットやリスクがあります。
事前に自分にどのような問題が生じる可能性があるか確認したうえで、弁護士に相談すれば、そのデメリットやリスクを抑え、また、回避することができる場合があります。
(1)親への影響
ガチャで自己破産をしたことが親にばれたくはないという人も多いでしょう。
必ずばれるということはありません。しかし、下記のような事情がありますから、たいていの場合は、事前に事情を説明して、ちゃんと相談しておいてください。
(2)親が奨学金などの保証人になっている場合
親に奨学金や家賃などの保証人になってもらっていると、債権者は、保証人である親に、奨学金の残高や滞納している家賃などの支払いを請求します。最悪、親も債務整理が必要になるかもしれません。
保証人になってもらっている場合には、必ず、事前に相談してください。
(3)親からの金銭的援助
自己破産により生じる様々な問題について、親に金銭的援助をしてもらうことで解決できる場合があります。
例えば、滞納している家賃やスマホの通信費、支払い終わっていないスマホの割賦払いや自動車ローンを親に支払ってもらうことで、偏頗弁済を避けつつ、上記の金銭問題により生じるトラブルを回避できます。
また、弁護士費用や破産管財人への報酬として、合計数十万円単位の大金がなければ、自己破産手続はできません。
早く自己破産するためにも、親に費用を援助してもらえるに越したことはありません。
(4)友人との関係
自己破産手続をしても、友人にばれることは原則ありません。
ただし、借金をしていれば、債権者として手続に巻き込んでしまいます。
詐害行為や偏頗弁済の相手になっている場合も、破産管財人が友人に対して流出した財産を取り戻しにいくため、面倒なことになりかねません。借金をしてしまっていれば素直に謝りましょう。
また、友人に高価なものを売却したり、借金を一気に返済したりしないようにしてください。
(5)スマホの解約について
先ほどスマホに関して親に滞納している通信費や本体代金の残りを支払ってもらえば問題はないと説明しました。
しかし、ガチャ課金の場合は、それができない場合があります。
課金の支払を、スマホの通信料と一緒に携帯会社決済でしている場合です。この場合には、スマホの解約は避けられないでしょう。
再びスマホを使う場合、通信料金を先払いするプリペイド携帯が利用可能です。
(6)就活への影響
就活への影響はほとんどありません。
自己破産手続中は、警備員や保険業界、金融業界の資格により働くことができなくなりますが、免責許可決定がされれば、資格制限は解除されます。
(7)財産の処分
社会人が自己破産する場合には、最も大きな問題となる財産の処分ですが、学生の場合には、さほど問題にはならないでしょう。
一応、目安としては、価値が20万円以上の財産は処分されるということだけ覚えておいてください。
(8)ブラックリスト
自己破産など債務整理をすると、信用情報機関に登録がされるため、クレジットカードの作成やローンができなくなります。いわゆるブラックリストへの登録です。
しかし、ブラックリストへの登録は、10年もすれば解除されます。学生のうちにさっさと自己破産をしておけば、社会人になってからブラックリストに悩まされる期間が短くなります。
あまり怖がらず、むしろブラックリストの問題があるからこそ、迅速に自己破産をするべきだと考えてください。
(9)引っ越しや旅行
管財事件では、裁判所の許可がなければ引っ越しや長期旅行ができません。
しかし、これも心配ご無用です。ほとんどの場合、事前にちゃんとした理由を説明すれば、許可は下ります。
4.ソシャゲの借金の整理は弁護士に相談を
ソシャゲは、学生の必需品となったスマホで気軽に遊ぶことができる娯楽です。しかし、課金、特にガチャは、「気軽に」お金をつぎ込めてしまうため、学生であっても、あっという間に高額の借金を抱え込むリスクがあります。
やってしまったものは仕方がありません。少しでも早く自己破産手続で借金を無くし、残る長い人生のためにリスタートを切りましょう。
泉総合法律事務所では、自己破産により借金問題を解決した実績が多数ございます。是非ともお気軽にご相談ください。
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