交通事故

追突事故等でむち打ちになってしまった場合の対処法と注意点

追突事故等でむち打ちになってしまった場合の対処法と注意点

泉総合法律事務所川崎支店のある川崎市は、交通事故の多い街といえます。

川崎市では年間に3,000件以上の人身事故が発生しています。川崎市が公表している統計によれば、平成29年の人身事故件数は、3,634件、負傷者は4,160人ですから、1日100人以上が交通事故によって負傷している計算になります。

追突事故で頸部に予期しない衝撃を受けたときには、軽い衝撃であっても痛みやしびれといった症状が生じることがあります。

このような「むち打ち症」は交通事故のケガとしてよく知られていますが、損害賠償の請求では苦労することも珍しくありません。

そこでここでは交通事故でむち打ち症になってしまった場合の正しい対処法と注意点について説明します。

1.追突事故によるむち打ち症

最初に、追突事故でむち打ち症になってしまったときの損害賠償について、基本的なことを確認しておきましょう。

(1) むち打ち症の自覚症状

交通事故ではむち打ち症になる人が少なくありません。特に後方から追突されるケースでは、予期しない衝撃を頸部に受けることで、想像よりも深刻な症状が生じる場合もあります。

よく「むち打ち症」といいますが、正式な傷病名ではありません。実際には、それぞれの具体的な症状により、「頚椎捻挫」、「バレー・ルー症候群」、「神経損傷」といった診断を受けることになります。

このうち最も多いのが「頸椎捻挫」です。

むち打ち症の自覚症状としては、

  • 首の痛み、頭痛
  • 首が硬くなって動きにくい
  • 倦怠感、疲労感
  • 吐き気
  • 肩こり、背中の痛み
  • めまい

といったものがあります。

軽微な追突事故では、事故直後には目立った自覚症状がなく、事故から数日経ってはじめて自覚症状が現れることも珍しくありません。

また、症状が長期化・慢性化してしまうこともあります。

(2) むち打ち症になったときに受け取ることのできる損害賠償

交通事故でむち打ち症になってしまったときには、交通事故の相手方(の保険会社)に次の費目の支払い(損害賠償)を請求することができます。

  • 入通院に要した費用(診察料・投薬量・交通費・入院雑費・介護手当など)
  • ケガを負わせたことに対する慰謝料(入通院慰謝料(傷害慰謝料))
  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益(後遺障害により就労が制限される場合)

2.むち打ち症の損害賠償請求でよくトラブルになること

実は、むち打ち症になってしまったときの示談交渉は、難航することも珍しくありません。

むち打ち症は、骨折などのように誰の目で見ても明らかな症状ではないため、相手方(保険会社)との間で、ケガの有無、症状の程度、必要な治療の程度といったことについて認識が異なる場合が多いためです。

ここでは示談交渉でよくトラブルとなる3つの具体例について解説します。

(1) 整骨院・接骨院で施術費用の支払いを拒否される

むち打ち症となったときには、頸部に痛みやしびれなどを感じることが少なくありません。

そのため、自覚症状を緩和する目的で整骨院接骨院でマッサージなどの施術を受ける人も少なくありません。

整骨院・接骨院での施術費用も損害賠償として請求することができます。

しかし、医師の診察を受けないまま整骨院・接骨院での施術を受けたときには、相手方保険会社から施術費用の負担を拒絶される場合があります。

(2) まだ治療を続けたいのに「治療費の支払い打ち切り」を通告される

追突事故によるむち打ち症に限らず、交通事故によるケガの場合には、「治療期間」をめぐって相手方保険会社と争いが起きることが少なくありません。

交通事故の損害賠償において、治療費の補償は「症状固定」の時期が大きな基準となります。

保険会社による治療費の支払いは、「症状固定」により打ち切りとなるのが一般的です。

それ以降も治療を続けたいときには、自費(健康保険や労災利用)で賄うことになります。

交通事故の損害賠償実務では、むち打ち症の治療期間は3ヶ月がひとつの目処とされています。

しかし、ケースによっては、3ヶ月を超えても自覚症状が消えない場合もあり、治療の継続を望む被害者と症状固定(治療費の打ち切り)を求める保険会社との間で争いになることがあります。

(3) 後遺障害等級認定が受けられない

医師によって症状固定と判断された後も症状が残ってしまったときには、後遺障害の有無によって補償の有無が決まります。

後遺障害の有無は、認定機関による審査によって決まります。

しかし、むち打ち症の多くは、レントゲンなどの画像診断で症状を確認することができないため、実際に症状が残っていても「後遺障害なし」と判断されてしまうことも少なくありません。

3.追突事故でむち打ち症になったときの対処法と注意点

交通事故の示談交渉は、「示談交渉のプロ」である百戦錬磨の保険会社の担当者を相手にしなければなりません。

交通事故の被害に遭ったときには、適切な補償を受ける権利がありますが、相手も慈善事業を行っているわけではありません。

被害者本人の知識が不十分であってり、マズイ対応があれば、示談交渉が不利に進められてしまうことだってあります。

受けた被害に対する補償を確実に受け取るためには、必要な知識を得て、正しく対処することが何よりも大切です。

(1) 追突事故で身体に衝撃を感じたときには、必ず病院へ行く

追突事故といっても事故の程度もさまざまです。

たとえば、センターラインオーバーの相手方と正面衝突した場合もあれば、停止しているところに後方から軽くぶつけられたに過ぎない場合もあります。

特に、軽微な事故の場合には、外傷もなく、身体に何の異変も感じないこともあります。

自動車を運転するときには、「どこかへ行く」という目的があることの方が多いので、先を急ぐあまりに、事故直後の対応が疎かになってしまうこともあります。

実際にも、事故の程度が軽微で外傷がなかったために、「事故直後に医師の診察を受けない」という人も少なくないようです。

事故翌日以降も普段のお勤めなどがある場合、外傷がなければ医師の診察を受けないまま放置してしまう人もいます。

しかし、むち打ち症は、事故から数日経ってからはじめて、首の痛みやしびれといった自覚症状が生じることも珍しくありません。

交通事故でケガによる損害賠償を請求するときには、「適切な時期」に「医師の診断」をうける(診断書を作成してもらう)ことがとても大切です。

医師の診断を受けていないときには、ケガによる損害賠償を全く受け取れない可能性もあります。

事故直後はなんともなくても、数日後に症状が現れるのがむち打ち症の難しいところです。

追突事故で身体に何かしらの衝撃を受けたときには、「何ともない」と思っていても、必ず医師の診察を受けて下さい。

(2) 適切な頻度で治療を継続する

交通事故でケガをしたときには、事故直後に医師の診察を受けさえすれば良いというわけではありません。

ケガの程度・症状に応じて必要な治療を継続して受けることが大切です。

むち打ち症の場合には、整形外科などの病院での治療は、「保存療法」がメインとなります。

そのため、「どうせ湿布薬を出してもらうだけだから」と通院を怠ってしまう人も実際には少なくないようです。

相手方の保険会社は治療の経緯を必ずチェックしています。

通院頻度・回数が少ないときには、「症状が軽い」と判断して早期に「症状固定」(治療費打ち切り)を打診してくることも少なくありません。

また、入通院慰謝料(傷害慰謝料)は、入通院の期間(日数)に応じて支払われる金額も異なります。

通院頻度が2日に1回以下の場合には、相場額よりも低い金額が算出されることもあるので注意が必要です。

治療費の立て替えが心配という場合には、自賠責保険への請求を示談交渉に先行して行うことで対応できます。

自賠責保険への請求についてわからないことがあれば、弁護士に相談すると良いでしょう。

(3) 自覚症状があるときには正しく医師に伝える

むち打ち症は、「ケガをした本人にしか症状がわからない」ことが少なくありません。骨折などのように目視できる症状がないことが多いからです。

医師は、過去の治療経験などを踏まえて治療方針や症状固定の時期を判断しますが、実際に感じる症状が他のケースとは異なる場合だって十分にあり得ます。

全く同じ事故がないのと同様に、全く同じケガというのもあり得ないからです。

痛みやしびれ、倦怠感といった自覚症状があるときには、きちんと医師に伝えることが大切です。

むち打ち症は、症状が慢性化する(後遺障害として残る)ことも珍しくありません。後遺障害の認定では、「事故後から症状が継続・一貫して生じているかどうか」はとても重要な要素となります。

また、自覚症状が緩和であるために、整骨院・接骨院での施術を希望する際にも、きちんとその旨を医師に伝えましょう。

整骨院・接骨院での施術費用を損害賠償として請求するには、医師が「施術が必要」と判断していることが前提になるからです。

(4) むち打ち症の後遺障害認定は治療段階から対応することも重要

むち打ち症は、治療終了後も症状が残りやすいケガです。事故から数年経っても、首にしびれが残ってしまったという人は実際にも少なくありません。

医師による治療が終わってもなお改善しない症状が残ったときには、「後遺障害慰謝料」という形で、今後の補償を一括で清算することになります。

あわせて、後遺障害によって仕事に制約が生じた際には減収分の補償を受けることもできます(実務では「逸失利益」と呼んでいます)。

後遺障害慰謝料・逸失利益は、損害保険料率算出機構などの独立した認定機関による「後遺障害等級認定」の結果に基づいて金額が決まります。

半身不随や植物状態のような重篤な後遺障害があるときには、数千万円以上の金額となることもあります。

しかし、むち打ち症の場合は、後遺障害等級認定を受けることが難しい症状としてもよく知られています。

多くのむち打ち症は、レントゲンなどで原因・症状を診断することができない(他覚症状がない)からです。

後遺障害等級認定は、書面のみの審査で行われるため、画像診断ができないことは、それだけで認定のハードルが高くなるのです。

後遺障害等級認定の結果が「非該当(後遺障害なし)」となれば、実際に症状があったとしても、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することもできません。

他覚症状のないむち打ち症で後遺障害等級認定を受けるためには、治療の段階から適切な資料を揃える(作っていく)ことがとても大切です。

医師の診断書の書きぶりひとつで後遺障害等級認定の結果が変わってしまうことも珍しくありません。

治療を担当する医師が後遺障害等級認定の事情に詳しくない場合もあります。実際にも、「患者に良かれと思って」症状を軽めに記載する医師もいるようです。

適切な後遺障害等級認定を受けるためには、被害者の側から医師に適切な働きかけをすることも重要です。

【参考】後遺障害認定で失敗しないために|被害者請求のメリット

(5) 不安があるときは、交通事故実務に精通した弁護士に早めに相談!

相手方の保険会社との示談交渉や、自賠責保険への請求、後遺障害等級認定に際しては、専門知識が必要な場合も少なくありません。

わからないことをそのままにして手続きを進めてしまえば、不利な結果となる可能性も高くなります。わからないこと、不安なことがあるときには、早めに弁護士に相談することが大切です。

弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定に必要な資料収集・医師への働きかけを適切に行えるだけでなく、慰謝料の増額も期待できます。

【参考】交通事故に関する質問「後遺障害慰謝料は弁護士に依頼すると金額が上がるのですか?」

4.交通事故によるむち打ち症は弁護士に相談を

むち打ち症となる場合の追突事故は軽微な場合も少なくありません。しかし、事故が軽微でも、症状が重い場合もあります。

しかし、むち打ち症の損害賠償請求は、専門家のサポートなしでは、満足のいかない結果となることも決して珍しくありません。

泉総合法律事務所では、交通事故の相談も初回は無料でお受けいただくことができます。

むち打ち症の被害にあって不安なこと、お困りのことがあるときには、お気軽にお問い合わせください。

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