過払い金返還請求のデメリットとリスクまとめ
過払い金返還請求では、一般的には「やり得」と言っても過言ではありません。デメリットが生じることはほとんどないのです。弁護士に任せれば、手間もほとんどかかりません。
しかし、具体的な事情、例えば借金が残っているかどうかなどによっては、いわゆるブラックリストへの登録などのデメリットが生じることもあります。
このコラムでは、過払い金返還請求をした際に生じる場合があるデメリットを説明します。
このコラムの目次
1.過払い金返還請求とブラックリスト
(1) 原則はブラックリストに登録されない
過払い金返還請求をする際に、多くの方々が気にされるのが、ブラックリストへの登録です。
結論から言ってしまえば、借金が残っていない完済の状況であれば、ブラックリストに登録されることは一切ありません。
過去には登録されることもあったのですが、金融庁からの指導もあり、現在では貸金業者やブラックリストを管理している信用情報機関が間違いを起こさない限り登録されることはないのです。
間違って登録されてしまっても、連絡を入れればすぐに抹消されます。
(2) 借金を完済していない場合
ただし、借金を完済していない業者に対して過払い金の返還請求をすると、ブラックリストに登録がされます。
ブラックリストに登録されている間は、
- 新規クレジットカードの作成
- ローンの契約
- 割賦払い
- 他人の借金の保証
などが出来なくなります。
なお、以下のことには問題が生じないので、ご安心ください。
- 銀行口座に悪影響は出ない
- 就職に悪影響は出ない
- 官報には載らない
- 住民票や戸籍にも載らない
- 職場にもばれない
借金残高があるため、ブラックリストに登録されてしまう場合のポイントは、過払い金の返還額と借金残高のどちらが大きいかによって、ブラックリストに登録されてしまう期間が大きく変わることなのです。
(3) 過払い金の返還額の方が多い場合
戻ってきた過払い金の方が多い場合には、それで借金を完済できます。すると、過払い金の残金が返還されたときには、ブラックリストへの登録が抹消され、元通りになります。
ですので、タイミングに注意すれば、日常生活にさほど大きな支障は出ません。
(4) 借金残高の方が多い場合
この場合は、借金が残ってしまいます。そのため、債務整理の一つ、任意整理をしたという扱いをされてしまいます。その結果、5年間、ブラックリストに登録され続けてしまうことになるのです。
過払い金の金額は、具体的な事情や業者との交渉次第で大きく変わります。計算通りにはいくとは限りません。そのため、経験のある専門家の意見を確認しなければ、十分な見通しをつけることは出来ないことに注意してください。
一方、完済していなくとも、過払い金の返還請求をすることで、借金を無くせる、そこまでいかずとも、大きく減らせる可能性があるというメリットも忘れないでください。
2.借金の復活
もし、現実になってしまった場合に最も大きなデメリットとなるのが、「期限の利益の喪失」による借金の復活です。
専門的な用語で何が何やらわからないと思いますので、かみ砕いて説明します。
借金は、一般的に分割払いをすることになります。しかし、その支払いが遅れると、残る借金を一括で払えという規定が、契約の中に入っています。
期限の利益とは、借金を一括でなく分割払いにしてよいということです。それを喪失するということは、分割払いに遅れてしまった以上、残る借金は一括払いでしろということなのです。
実際には、貸金業者はこの主張をすぐにはしてきません。自己破産されてしまえば、ほとんど借金が返ってこないこともあるからです。
とりあえず支払いの催促をして、ちょっと遅れたぐらいなら期限の利益の喪失で一括払いしろと言わずに、それまで通り分割払いを続けさせます。
しかし、過払い金を返還請求されたとたん、「返済中に支払いが遅れたことがあったが、その時に本当は一括払いしなければならなかったのにしていない。借金と利息は完済しているが、遅延損害金を支払っていない」と主張し始めることがあるのです。裁判所がこの貸金業者の主張を認める可能性はゼロではありません。
期限の利益の喪失の主張が認められると、完済したはずの借金が、遅延損害金により復活してしまう恐れがあるのです。
この問題は、事前の予測も、貸金業者との争いも、裁判所がどう判断するかの見通しも、結局は専門家にしか判断できません。
逆に言えば、専門家の適切な助言に基づき、期限の利益の喪失を裁判所が認めてしまいそうな貸金業者だけよけて、過払い金返還請求をすればよいのです。
3.費用倒れのリスク
専門家に依頼をすると、着手金が必要な場合があります。相場としては、1社あたり5万円ほどです。さらに、成功報酬として、返還額の20%(裁判になると手間がかかるため、25%とする専門家が多いです)が、過払い金から差し引かれます。
そのため、特に裁判になると、費用倒れになるリスクが無いわけではありません。
過払い金は、必ず満額を手に入れられるわけではありません。交渉段階では、元本の5割から9割程度しか、業者は返還しようとしません。
まして、過払い金の利息(年に5%。2019年現在なら、合計元本の半分以上になりえます)まで返還してくれる業者はめったにいません。
さらに、以下のような法律上の問題点があると、穏健な業者でも徹底抗戦してきます。
(1) 取引の分断と消滅時効
過払い金は、取引終了時から10年の消滅時効にかかります。
10年以上前に借金を完済していると、再度借金をするまでの間の期間など、諸々の具体的事情によっては、完済時に取引がいったん終わっているとして、それ以前の過払い金が時効にかかってしまいます。
(2) 和解契約
借金の返済が遅れていたことがある場合に、貸金業者と、過払い金を返還請求しない代わりに借金を減額してもらうという和解をしてしまっていることがあります。
なお、支払いの遅れがある場合に、期限の利益の喪失が問題になることがあるのは、すでに述べた通りです。
(3) 債権譲渡
貸金業者が、借金を取り立てる権利を他の貸金業者に売却している場合に、過払い金をどちらの業者に請求できるかという問題があります。
一般的には、買い取った業者へは過払い金を返還請求出来ません。しかし、契約者としての地位そのものを譲り受けたと言える場合には、請求できる可能性があります。
このような費用倒れのリスクについては、専門家によく確認しておきましょう
4.自分で請求した場合の様々なデメリット
費用倒れが嫌だから、自分で請求しようという方がたくさんいますが、率直に申し上げて、あまりお勧めしません。
以下のようなデメリットが生じてしまいます。
(1) 取り戻せる金額が少ない
これまで様々な法律上の問題点を説明してきました。
貸金業者は、これらの問題についてよく理解しています。対抗するには、専門家でなければ困難です。
一般の方が自分で返還請求すると、専門家に依頼した場合よりも、取り戻せる過払い金の額が少なくなってしまう恐れが非常に強いのです。
(2) 手間と時間がかかる
過払い金返還請求は、あくまでも法律的な紛争です。
一般の方がするとなると、多くの手間がかかってしまいます。
- 取引履歴の開示請求
- 過払い金の引き直し計算
- 貸金業者との電話交渉
- 裁判所への出頭と文書作成
専門家に依頼すれば、請求先の貸金業者はどこかを伝え、資料を提出し、手続をどこまでやるかの判断をするだけです。
(3) 借金していたことがばれる
貸金業者や裁判所などからの電話や郵便が来ますから、過去の借金や過払い金返還請求をしていることが家族にバレやすくなります。
専門家に依頼すれば、そのリスクはぐっと下がります。
5.過払い金返還請求は弁護士に相談を
過払い金返還請求は一般的にはほとんどデメリットはありません。しかし、具体的な事情によっては、ブラックリストへの登録など、日常生活に支障が生じることがあり得ます。最悪、期限の利益の喪失により、借金が復活することも考えられます。
もっとも、専門家の知見によれば、そのリスクをしっかりと見極めることは不可能ではありません。なんとなく怖いからというだけで過払い金返還請求をしないのはもったいないでしょう。
一方で、たかが過払い金返還請求だからと言って、自分だけで手続を行うのは、さすがにリスクやデメリットを無視できません。
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