自己破産すると滞納している水道光熱費はどうなる?
自己破産手続を検討しているほど借金の返済にお困りの皆様の中には、水道、ガス、電気などの生活インフラの料金の支払にも苦しんでいる方がいらっしゃることでしょう。
自己破産手続をすると、借金など「お金を支払う義務」、つまり「債務」を支払わないで済むようになるのですが、中には、例外的に支払義務が残るものもあります。
では、滞納している水道光熱費はどうなるのでしょうか?また、自己破産後のライフラインはどうなるのでしょうか?
この記事では、水道光熱費の不払いを理由に水道などを止められてしまうことはないのかといったことも含めて、わかりやすく説明します。
このコラムの目次
1.滞納中の水道光熱費は自己破産するとどうなる?
生活を維持するためには、水道、ガス、電気などの生活インフラが不可欠です。
しかし、借金の返済に追われる中、水道光熱費を支払えなくなってしまう方はいらっしゃいます。
滞納した水道光熱費は、サラ金などからの借金と同じように、自己破産手続で支払わないでよくなるのでしょうか。
破産による水道光熱費の取り扱いについては、
- 自己破産手続を裁判所に申し立てた日
- 自己破産手続を始めると裁判所が決定した日
が、大きなポイントになります。
以下、具体例を挙げて説明します。
「申し立てた日を含む請求期間1か月分」より前の「下水道以外の水道光熱費」は、支払わないでよくなる(免責される)
仮に、あなたが自己破産をしたいと裁判所に申し立てをした日が、「5月1日」だったとします。
また、電気代は「前の月の26日から今月の25日までの料金を、翌月5日に請求する」ことになっているとしましょう。この場合、4月26日から5月25日の請求期間1か月の中に、申立日である5月1日が含まれています。
ですから、4月25日以前の分の水道光熱費を滞納していたとしても、その部分に関しては、下水道料金を除いて、自己破産すれば支払わないでよくなる(免責を受けられる)のです。
「申し立てた日を含む請求期間1か月分」の水道光熱費は、自己破産しても支払わないといけない(免責されない)
逆に、申立てをした5月1日を含む、4月26日から5月25日までの料金は、自己破産をしても免責されず、支払わなければなりません。
ですから、6月5日に支払いが出来なければ、後で説明する通り、電気を止められてしまう可能性が高いです。
法律では、下水道の料金は、他の公共料金とは(同じ水道料金である上水道の料金とも)違う取り扱いがされています。
実は、水道料金の中でも、下水道の料金は、税金と同じような特別扱いがされています(滞納に対しても、税金に準じた徴収手続が認められています)。そのため、利用した期間と申立日の時期にかかわらず、下水道の料金については、自己破産しても免責されず、全て支払わなければならないのです。
2.自己破産後の生活
滞納している水道光熱費を、自己破産することで支払わなくて良くなったとしても、水道や電気の事業者が、「代金を支払わなかったのだから供給ストップします」と言って来たら一大事です。
自己破産をすると、その後の生活はどうなるのでしょうか?
(1) 自己破産によりインフラ供給は止まらない
債務者の破産申立てを受けた裁判所は、自己破産手続を始める条件をクリアしていることを確認すると、「自己破産手続開始決定」をして、手続を始めます。
裁判所がこの破産手続開始決定をして以降は、「自己破産手続の申立て前の代金未払い」を理由に、水道や電気などのインフラが止まることはありません。
自己破産手続を定めている「破産法」が、水道や電気事業者などに、上記の場合にインフラ供給を止めることを禁止しているからです。
つまり、自己破産を理由に、供給契約を解除されることもありません。
上述のとおり、法律がインフラ供給停止を禁止している時期は、あくまで破産手続開始決定の「後」です。ですから、破産手続開始決定の「前」には、最終的に自己破産手続により支払わなくてよくなるはずの料金を滞納していることを理由に、インフラ供給が停止されてしまう恐れがあります。
破産手続開始前のインフラサービスの停止を回避するためには、滞納を解消するしかありません。とはいえ、自己破産手続直前に滞納を解消すること(滞納している電気代等を支払うこと)については、破産手続上、別の問題が生じる可能性があります。
これについて、詳しくは最後の段落3で解説します。
(2) 破産手続申立『後』の代金未払いに注意
先述の通り、自己破産手続を申し立てた日を含む月の1か月分は(それ以降の料金も当然)、自己破産をしても支払わなければいけません。
法律が破産手続開始決定の以降に禁じているのは、「自己破産手続の申立て『前』の料金未払いを理由とした供給停止」です。
よって、この期間の水道光熱費=破産申立『後』の料金を支払わなければ、手続開始決定後でも、それを理由に供給停止の恐れがあります。
弁護士に自己破産を依頼すれば、弁護士は『受任通知』という書面を債権者に送付して、取り立てと支払いをストップします。そのため、水道光熱費の滞納を解消するための金銭的な余裕は生まれるでしょう。
いずれは支払わなければならない料金なので、滞納をせずに支払うことをお勧めします。
3.滞納中の水道光熱費の支払いで注意すべきルール
そもそも、自己破産手続は、借金全額を支払いきれなくなった債務者が裁判所に申立てをして、生活に最低限必要なものを除いてほとんどの財産を債権者に配当する代わりに、それでも支払いきれない借金などの債務を免除(免責)して貰う債務整理手続です。
債務者からすれば「借金の免除」が目的ですが、債権者からすれば、裁判所に債務者の財産を配当して貰うための手続なのです。
そのため、破産法上、債権者への配当や返済に関しては、いくつかのルールがありますが、そのうち、最後に、水道光熱費の支払いとの関係で問題となりうるルールを説明します。
(1) 債権者平等の原則
「債権者平等の原則」とは、原則として債権者を不公平に取り扱ってはならないというルールです。
例外的な場合を除き、一部の債権者が優先的に借金など債務を回収することは出来ません。
自己破産をする債務者からも、原則として、手続中の返済は禁じられています。
これを破り、一部の債務についてだけ支払うことを「偏頗(へんぱ)弁済」と呼びます。
偏頗弁済は、本来、全ての債権者に対して公平・平等に配当されるはずの債務者の財産を、特定の債権者にだけ渡してしまうものです。
ですから、上述の債権者平等の原則に反しかねません。
借金の返済が困難になったと分かった時点、もっと言えば、自己破産手続の直前に滞納している水道光熱費を支払うことは、この「偏頗弁済」に該当してしまう恐れがあります。
そして、偏頗弁済は、原則として免責が許されない事情(免責不許可事由)の一つになっています。
(2) 免責不許可事由
免責不許可事由があると、最悪の場合、自己破産が認められずに債務が残ってしまいます。
また、「管財事件」という手続で、自己破産をすることになります。
管財事件では、「破産管財人」が選任され、配当処理や免責を認めるべきかの調査を行います。手続きが複雑になり時間がかかる上に、破産管財人の費用(人件費)を破産者自身が負担しなければなりません。
また、偏頗弁済がある場合、「否認権の行使」と言って、破産管財人は、債務者が支払ったお金の返還を、返済先に対して求めること(その返済がなかった状態に戻すこと)も出来ます。
なお実務上は、免責不許可事由があっても、よほど悪質でない限りは、裁判所が、破産管財人の意見をもとに一切の事情を検討して、その裁量によって特別に免責を認める「裁量免責」により免責されていることが多いです。
また、水道光熱費については、生活上必要不可欠な支払いであるため、裁判所の許可をしっかりと得れば、偏頗弁済とならない可能性もあります。
ただし、いずれも可能性の話である以上、滞納中の水道光熱費の支払いは、独断で安易に行なわず、必ず一度弁護士などの専門家に相談をしましょう。
4.自己破産手続なら泉総合法律事務所へ
自己破産手続を行ない、免責決定を得れば、直近1ヶ月分の上水道、電気、ガス料金、および下水道料金以外の水道光熱費は、全て免責されます。
また、滞納料金の免責を理由としてインフラが停止されることはありません。滞納分を支払っても、それが裁判所の許可を得たものであれば問題ないでしょう。
借金の返済のために、水道光熱費の滞納をしてしまっている方、すでに供給が止まってしまっている方は、一刻も早く自己破産手続を含む債務整理手続をご検討下さい。
泉総合法律事務所は債務整理の解決実績が豊富にあります。相談は何度でも無料ですので、どうぞお気軽にお越し下さい。
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