債務整理

自己破産における銀行口座の凍結・預金の処分に関する対策

自己破産での銀行口座に関する対策~預金の処分や口座の凍結など~

自己破産手続は、裁判所に申立てをして、手持ちの財産のほとんどを債権者に配当する代わりに、原則、支払いきれない借金を全額帳消しにしてもらう債務整理手続です。

処分される財産の中には、銀行口座の預貯金も含まれます。
また、銀行に対して借金がある場合、自己破産手続をすることで、その口座の預金の引き落としができなくなるうえ、残高が借金と相殺されることもあります。

「そんな影響があるなら自己破産なんてしたくない」と思われるかもしれませんが、これらの問題に対して、取りうる対策はあります。

このコラムでは、自己破産をすることで銀行口座に関して生じる口座凍結や預金の処分などの問題への対策を説明します。

1.裁判所による預貯金の処分

自己破産手続では、銀行口座の預貯金が裁判所に処分され、債権者に配当されることがあります。

裁判所にもよるのですが、目安としては、手続が始まった時に、残高が20万円を超える場合に処分されます。
20万円以下の預貯金については、債務者の生活に必要な「自由財産」として、処分されません。

また、手続開始後に入金をして20万円を超えても、手続開始後に手に入れた財産は「新得財産」と呼ばれ、処分されません。

なお、処分の対象となる口座は、原則として債務者名義のものです。

ただし、例えば、妻が自己破産する場合における、家計管理のために夫の給料だけで積み立てられた専業主婦名義の預金口座のように、事実上別の人(夫)の財産であると判断されれば、妻が自己破産しても処分されない場合もあります。

2.預貯金の処分への対策

現金のみならば、どの裁判所でも99万円まで自由財産として手元に残せます。

ならば、さっさと預貯金を引き出して現金に換え、預貯金自体の残高を20万円以下にしてしまえばいい、と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、安易な出金はトラブルのもとになります。
手続直前に銀行口座からの大金の引き出しがあると、いわゆる「免責不許可事由」に当たる行為をしたのではないかと、裁判所に疑われてしまいます。

引き出したお金を隠したりすれば、「財産隠し」という悪質な免責不許可事由となり、借金が免除されないばかりか、罪に問われることすらあります。

引き出したお金を弁護士費用など正当な支払いに充てることは許されますので、弁護士の指示に従い、このような正当な支払いに充てたと裁判所を納得させられる資料を作成・提出できるようにしてください。

【預貯金と財産隠し】
財産隠しは、免責不許可事由の中でも最も悪質とされます。また、破産詐欺罪という犯罪になることもあります。たとえば、口座自体を隠す・口座からおろした現金をタンス預金などで隠す・親族の口座に送金するなどです。
裁判所には、全ての銀行口座について、通帳のコピー2年分を提出しなければなりません。不審点があれば、どこまでもさかのぼって提出を要求されることもあります。提出を拒むことや、嘘をついてごまかすこと、偽造なども、悪質な免責不許可事由となっています。
すでに財産隠しをしてしまっていたら、経過を弁護士に説明し、その指示に従い、裁判所や破産管財人には正直に謝りましょう。そうすれば、反省ありとして裁量免責される可能性はあります。

3.銀行口座の凍結

借入先の銀行に開設した預金口座は、受任通知の送付により、凍結されて出金ができなくなります。銀行によっては、さらに入金もできなくなります。

(1) 凍結と相殺の関係

債務者は銀行に借金を返済する義務を、銀行は債務者に預金を支払う義務を負っています。
相殺とは、このようにお互いにお金の貸し借りがある場合に、かぶっている金額については消滅させ支払わないようにしてしまうことです。

銀行は、受任通知を受け取ると残りの借金を分割でなく一括で請求することができるように定めています(いわゆる期限の利益喪失約款)。そのため、受任通知を送付すると、銀行は相殺

が可能となります。

銀行が相殺する前に債務者に預金を引き出されないようにするため、銀行口座が凍結されてしまうのです。

【入金と相殺】
凍結されても入金が許されている場合、凍結後に給料などが入金され、相殺されてしまうのではないかという心配は不要です。
法律により、相殺は、受任通知の送付時の残高に対してしかできません。また、1回しか相殺できません。

(2) 凍結される口座

借入先銀行の口座であれば、全ての支店の口座が凍結されます。もっとも、借金をしていない銀行の口座が凍結されることはありません。

さらに、口座のある銀行とグループ関係にあるサラ金から借金をしていても、銀行自体から借金をしていない以上、口座が凍結されることはありません(もっとも、自己破産したという情報は共有されますので、新規口座開設に悪影響が出る恐れはあります)。

(3) 口座凍結による影響

口座が凍結されると、以下の引き落としに影響が出ます。

  • 電気などのインフラ料金
  • アパートの家賃
  • 税金や健康保険料、年金保険料
  • 任意保険料

また、銀行によっては、お金を下ろすことだけでなく、預けることもできなくなります。

結果、以下のものを凍結された口座に振り込んでもらえなくなってしまいます

  • 給料
  • 年金
  • 児童手当などの公的給付

特に、給料の振り込みができなかったことを会社が知ると、自己破産をしたことが会社にばれてしまう恐れもあります。

(4) 凍結の期間

凍結解除までは2か月以上かかることがほとんどです。

凍結解除により、原則として、入出金がまた自由に行えるようになります。

ただし、破産管財人により凍結が解除された場合は、口座の管理権は、手続中、破産管財人に移ります。

4.凍結や相殺への対策

(1) 預貯金の引き出し

凍結前に預貯金を現金に換え、相殺を回避するためには、受任通知を送付する前に、口座から預金を引き出す必要があります。

しかし、この場合は、財産の処分に関して説明したのと同じ、財産隠しに当たる可能性があります。
したがって、自己判断の安易な預貯金の引き出しはやめた方がいいでしょう。

(2) 引落先や振込先の変更

各種料金の支払いのための引落し口座や、給料などの振込み口座の指定は、受任通知の送付前に変更手続をする必要があります。

また、自己破産手続に関わらず、銀行口座の開設はできます。手続中でも問題ありません。
借入先の銀行でも、凍結された口座がある支店以外の支店では、口座の新規開設ができます。

ただし、借入先の銀行や、借入先の消費者金融の親会社である銀行では、新規口座開設を拒否される可能性は捨てきれないことにご注意ください。

5.自己破産の銀行口座対策は弁護士に相談を

自己破産手続による銀行口座への様々な悪影響は、法律や裁判所の運用を守って適切な対策をとれば大部分を回避することが可能です。

しかし、専門的知識を持たない方が一般的な常識にもとづいて対処をしようとすると、かえって免責不許可事由に当たる行為をしてしまうなど、トラブルが生じる恐れがあります。

出来る限り早い段階から、弁護士に銀行口座に関わる様々な情報を提供し、その助言を受けて対策していくようにしましょう。

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