後遺障害認定で非該当の理由とは?認定されるための対策と方法
後遺障害の等級認定において第14級にも当たらなかった、つまり、非該当となってしまった場合には、原則、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができません。
この場合には、再申請ができるのでしょうか。
また、再申請をしたとしても、認定結果を変え後遺障害等級に該当させる方法があるのかという疑問も生じます。
今回は、後遺症を自覚していても後遺障害等級認定で非該当になってしまう理由と再申請で認定を受けるための方法について解説します。
1.後遺障害の認定基準とは?
(1) 第1級~第14級に分類された後遺障害に該当すること
交通事故が原因のけがを6か月程度治療しても、痛みや痺れなどの後遺症が残った場合に、担当医師から症状固定の診断を受け後遺障害の等級認定を申請します。
後遺障害等級認定制度では、最も重度の1級から最軽度の14級まで障害を分類し、申請後の審査の結果、いずれかの等級に該当するか、該当するものがない、つまり非該当かを決定します。
(2) 後遺障害の要件をすべて満たすこと
交通事故の後遺障害等級の認定基準は労災の障害認定基準を準用しています。
後遺障害は、「交通事故との間に相当因果関係があり、回復困難と見込まれる精神的または身体的な障害で、その存在が医学的に認められ労働能力の損失を伴うもの」と規定されています。
これらすべてを満たし各等級の要件に該当すると判断されれば、いずれかの等級に認定されることになります。
2.後遺障害認定で非該当となる理由
- 交通事故とけがの間に相当因果関係が認められない
- 障害が将来的に回復する可能性がある
- 障害の存在が医学的に認められない
- 労働能力の損失を伴うと認められない
- 診断書に記載された症状部位ごとの症状に整合性がない
- 自覚症状についての主張が一貫していない
- 症状についての主張があいまいで分かりづらい
- 客観的な資料から所見などが読み取れない
- 検査所見と傷病名とが一致しない
- 他覚的所見がないうえに神経学的な判断や推測もなされていない
(1) 交通事故とけがの間に相当因果関係が認められない
因果関係とは、原因がなければ結果は生じなかったという関係のことで、交通事故でいえば、事故がなければ損害は生じなかったという関係です。
そのなかでも相当因果関係が認められる損害とは、この交通事故であれば通常はそのような損害が生ずるであろうと認められ得る相当性があるものということです。
この相当因果関係の認められる範囲の損害だけが、賠償の対象となると考えられているのです。
例えば、徐行している車にぶつかった拍子に転び腕を骨折してしまったというようなケースでは、事故と骨折との因果関係が曖昧で相当性に欠けると否定されることがあります。
また、車同士の衝突事故でも、首の痛みや違和感はあったものの事故直後は軽く考え病院での診断を受けずに、1週間以上経ってから痛みや痺れが強くなり病院を受診したというケースでは、自覚される症状が必ずしも事故によるものとは言えないと因果関係が否定されることが多いようです。
(2) 障害が将来的に回復する可能性がある
後遺障害として認められるには、将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的な障害でなければなりません。
外部から見て他人にも明らかに分かる、身体の一部を欠損したような場合を除き、痛みや痺れなどの神経系の症状の場合には、回復しないことを証明するに足る資料がなければ回復の可能性を残すと判断されるのです。
(3) 障害の存在が医学的に認められない
非該当の理由の中でも多数を占めるのが、自覚症状を裏付ける有意義な医学的所見に乏しいことです。つまり、後遺障害の存在が認められる医学的根拠がなければ認定はされないのです。
医学的根拠とは、外傷的所見のほかレントゲンやMRI、CTなどの画像のことで、他覚所見というものです。
また、他覚症状はなく自覚症状しかないむち打ちなどの神経系の症状の場合は、医学的に十分推測できることが必要です。
医学的な推測を認容することの難しさが非該当の多さを生み出していると言えるでしょう。
(4) 労働能力の損失を伴うと認められない
後遺障害を負うとは、それ以前の労働能力の一部または全部を消失することだと定義されています。
後遺障害がなければ被害者が得られたであろう経済的利益が失われることを損害と考え、後遺障害が認められれば逸失利益を請求できるのです。後遺障害等級表の中にも、「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの(9級10号)」と要件が提示されているものもありますが、それに該当するに十分な根拠が認められないと非該当となることがあります。
(5) 上記以外の理由
後遺障害認定が非該当であると言われてしまう理由には、以下のようなケースもあります。
- 診断書に記載された症状部位ごとの症状に整合性がない
- 自覚症状についての主張が一貫していない
- 症状についての主張があいまいで分かりづらい
- 客観的な資料から所見などが読み取れない
- 検査所見と傷病名とが一致しない
- 他覚的所見がないうえに神経学的な判断や推測もなされていない など
3.第14級に該当する後遺障害
(1) 第14級で非該当とされがちなむち打ち
後遺障害の等級認定とは、人によって異なる症状を一定の要件枠の中で公正に分類しようとするものですから、同じ症状を訴えても等級が適正に評価されなければ後遺障害部分の損害賠償は請求できないことになります。
特に、後遺障害の中で最も軽度に分類される第14級に該当しなければ非該当の可能性が高まるのです。
そのなかでも、むち打ちのような神経系の症状が非該当となるケースが多いようです。
1号 |
一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
---|---|
2号 |
三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
3号 |
一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
4号 |
上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
5号 |
下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
6号 |
一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの |
7号 |
一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
8号 |
一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの |
9号 |
局部に神経症状を残すもの |
(2) 非該当になる原因
非該当になるにはそれ相応の理由があります。
これは、非該当となった原因を明確にすることで、再申請に必要なものがはっきりするとも言えるのです。
- 事故が軽微であるのに対し被害者が医師に申告している症状が不相応に重篤で、事故と後遺障害の間の相当性に疑問がある
- 事故直後から医療機関に通院しているものの、通院実績が乏しい
- 事故当初から訴えている症状が回復と再発を繰り返すなど一貫性が見られず、症状の連続性も欠く
- 症状が重篤かつ日常生活で慢性的に出ている常時性のある症状ではない
- 他覚的所見と症状にズレや矛盾がある
4.非該当となった場合の対策
(1) 提出した書類を精査する
非該当の通知を受け取った場合には、そこに記された理由が重要なポイントなりますから、しっかり確認しましょう。
後遺障害認定基準に照らし合わせ、診断書や提出した資料等を精査し、該当に足る必要な証拠書類が何であるかを見つけ出しましょう。
(2) 後遺障害事案整理票を取り寄せる
審査から非該当という結論に至るまでの経緯とその詳細は、後遺障害事案整理票に記載されています。その内容から、非該当の理由がどの部分にあったのかをさらに細かく検証することが重要です。
後遺障害事案整理票は、非該当の通知をした損害保険会社に請求すると入手できます。
(3) 認定基準を確認する
後遺障害等級は具体的な所見を一律に決めているわけではありません。どの障害にどのような資料が必要かはケースバイケースなのです。
ですから、後遺障害診断書の所見と該当する認定基準を照らし合わせ裏付けとなる証拠資料の必要性について確認してみましょう。
(4) 被害者請求をする
被害者請求とは、被害者側が相手方自賠責保険会社に対し直接、後遺障害等級認定を申請する方法です。
法律(自動車損害賠償保障法第16条)で認められた被害者の正当な権利ですが、自らの立証責任を負うことになるため、書類や資料を揃える手間が発生します。ただしその分、適正な認定がなされるように申請内容を主導することが可能となり、納得のいく形での申請ができます。
一般的に、後遺障害認定申請は、相手方任意損保による事前認定でなされることが多く、公平かつ適正な評価がされにくいのが現状です。
初回申請時から被害者請求を選択すべきでしょうし、事前認定で非該当になった場合には、被害者請求による異議申立手続きを踏むようにしましょう。
5.再審査の方法
(1) 異議申立の請求をする
非該当となった際に再審査の方法として、認定に対する異議申立を自賠責保険会社に提出する方法があります。
①異議申立は外部専門家で構成された審査会が審査する
後遺障害は損害保険料率算出機構という機関が認定しますが、初回申請時はこの機関内の自賠責損害調査事務所が具体的な審査を行います。
一方、異議申立の場合、審査の客観性および専門性をより確保するため、弁護士や専門医、学識経験者など外部の専門家で構成される損害保険料率算出機構内の自賠責保険審査会という機関が具体的な審査を行います。
異議申立で後遺障害を認めさせることは困難を極めますが、初回申請よりも公正さが担保されていることは間違いないでしょう。
②異議申立には医学的根拠が必要
異議申立は何度でも行うことができますが、新たな医学的証拠がないかぎり認定が覆ることはないと考えた方がよいでしょう。
その高いハードルを超えるには、前回の申請とは異なる有力な資料が必要です。
初回の資料に不足していると考えられる部分については医者に医療照会などを行い、異議申立のための医証を再度収集しましょう。
その上で、被害者に残存する症状が認定基準を満たし後遺障害等級に該当するという主張を論理的かつ説得的に意見書にして提出します。
(2) 紛争処理の申請をする
次に、(財)自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理の申請をするという方法があります。
公正中立で専門的な知見を持つ弁護士や医師などで構成された委員会が調停を行います。これでも決着がつかない場合は、裁判以外に解決の方法はありません。
できるだけ早い段階で、交通事故を得意とする弁護士を探し相談することを強くおすすめします。
(3) 裁判で決着をつける
非該当を覆すための一番簡便な方法は、弁護士に相談し裁判で決着をつけることです。
一度非該当となった判断を素人である被害者が覆すことは非常に難しいと言わざるを得ません。
また、これまで見てきたように、再審査を有効にするには多くの新たな資料とその準備が必要です。
交通事故被害に遭って後遺症が残りそうな場合、早めに弁護士に相談しましょう。適切なアドバイスを受けることで、正当な認定を得ることができます。
6.後遺障害認定も泉総合法律事務所へ
このように、後遺障害認定が非該当になってしまうには、それなりの原因があります。この原因を解明し、異議申立の請求をすることで、正しい後遺障害認定を受けられる可能性もあります。
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