交通事故

保険会社が提示する過失割合に納得がいかない被害者の皆さまへ

保険会社が提示する過失割合に納得がいかない被害者の皆さまへ

「交通事故に巻き込まれて、ただでさえ腹立たしく思っているのに、保険会社から提示された過失割合にとても納得できない」
「相手に非があることが明らかな事故なのに、なぜ自分の過失割合がこんなに大きいのか?」

この記事をご覧いただいているのは、そういった被害者の方々かと思います。

今回は、このような過失割合に納得がいかない事案の場合に、被害者の方がどのように対処すればよいのかを詳しくご説明します。

1.保険会社が提示する過失割合について

実は、加害者の任意保険会社が示してくる過失割合は、適正とはいえない場合が多々あります。

保険会社に提案された過失割合が腑に落ちないのであれば、安易に示談には応じることは絶対にしないでください。

一度示談が成立してしまうと、後からくつがえすのが非常に大変です。

2.過失割合とは

交通事故によって損害が発生した場合、被害者にも事故の発生について責任を負うべき点が認められるときには、その度合いに応じて損害賠償額を減らすのでなければ、不公平だといえます。

これが、過失相殺(民法722条2項)の基本的な考え方です。

過失割合というのは、そのために、交通事故について加害者・被害者それぞれが負うべき責任の割合を数値化したものです。

具体的には、損害賠償額は

全損害賠償額×(100%-被害者の過失割合)=被害者の請求できる損害賠償額

となります。

要するに、被害者の過失割合が高くなると、その分相手に請求できる損害賠償金が減らされてしまうことになるのです。

このように、直接に損害賠償金額に影響を与える要素となりますから、過失割合は、加害者・被害者間で非常に激しい争いとなりやすい箇所になります。

3.過失割合の決まり方

損害賠償責任の問題は、交通事故の民事の側面における争いです。

警察には、民事不介入の原則がありますので、交通事故現場で警察官に尋ねたとしても答えは返ってきません。

過失割合は、あくまで、加害者・被害者間の話し合いで決めるか、話がうまくまとまらなければ、最終的には、訴訟を提起し裁判所に決めてもらうことになります。

通常の流れであれば、加害者側の保険会社が、この過失割合をとりあえず決めて、被害者に提示してきます。この際には、警察において作成された実況見分調書(人身事故の場合)や、加害者からの聴取をもとに事故状況を把握し、類型化された過失割合の過去の判例に照らした上で、その算出がなされています。

4.保険会社の提示してくる過失割合が正しいとは限らない

加害者側の保険会社の担当者が、判例を引用するなどしてもっともらしく過失割合を提示してくるので、被害者の多くが、そういうものか、と交渉を諦めてしまっているという現状があります。

しかし、その割合は、絶対に正しいとは限りません。それどころか、以下の理由を知れば、保険会社の提示を鵜呑みにしてはならない、まずは疑ってかかったほうがいい、ということを理解していただけるでしょう。

(1) 全く同じ事故は存在しない

まず、世の中で起きてしまった事故には、一つとして全く同じ状況で起こったものは存在しませんから、保険会社の担当が参考にした判例と実際の事故状況には必ず微妙な違いが存在します。そのような場合、基本となる過失割合だけでなく、その基本割合を修正する様々な要素が定められていて、その適用によって調整を図ります。

しかしながら、この修正要素につき、保険会社の担当員が適正な判断をできていないケースが往々にしてあります。

(2) 保険会社はあくまで営利会社

保険会社は、基本的に自身の契約者(加害者)の言い分を基礎に過失割合を考えます。

もし、加害者が事実と異なる説明をしているような場合には、当然、正しい過失割合は導かれないでしょう。

また、保険会社もあくまで営利会社です。そのため、保険金の支払いについてはなるべく少なくしたいと考えるでしょう。

ですから、被害者側に有利な事実や、加害者側に不利な事実について、あえて見て見ぬふりをしてしまっている可能性もあります。

5.相手の過失割合の主張に反論はできるのか

すでにお話しましたように、過失割合は、基本的には加害者・被害者の話し合いで決めるものです。

ですから、相手方の主張に納得ができないような場合には、当然、反論することができます。

とはいえ、お互いの主張が食い違って平行線をたどるという事は、すなわち交通事故の発生原因について、お互いの主張が対立しているということです。そのような場合に上手く相手方を説得するには、相応の根拠が必要となってくるのも確かです。

事故態様に争いがある場合、保険会社は独自に調査を行って、その結果を被害者に提示する場合があります。

これに対して、被害者としては、事実関係を明確にするために、以下のような証拠を利用することによって、客観的な資料に基づく反論を行うことができます。

(1) 実況見分調書など

人身事故の場合、交通事故が発生すると、警察官が事故現場で当事者の立ち会いのもと、事故現場見取り図、実況見分調書、警察官調書を作成し、その内容に間違いがないことの確認を取った上で、当事者に署名捺印をさせます。

さらに、警察官の作成した調書について当事者に食い違いなどがあれば、検察官が調べを行い、検察官調書を作成します。

加害者の刑事責任が略式的続きで終了する場合には、以上の書類が刑事裁判記録となります。

加害者が起訴され、通常の刑事裁判手続きで刑が確定する場合には、公判調書が作成され、これも刑事裁判記録となります。

これらは事故直後に作成されたものである上に、当事者が署名捺印しているので、証拠としての価値が高いものです。

事故の発生状況や信号がどうなっていたか、事故現場付近の道路の状況などについては、これらが重要な証拠になります。

(2) ドライブレコーダー

ドライブレコーダーの映像も、事故の状況についての有力な証拠となり得るものです。安価になってきたので、設置されている方も多いかと思います。

こういった、自分の主張を裏付ける証拠を集め、相手方の主張に反論していくことになります。

6.過失割合を変更できる可能性がある状況まとめ

  • そもそも判例タイムズの基準から離れている場合
  • 過失割合の修正要素が適用されていない場合

現在、保険会社は、交通事故の裁判例が集積した別冊判例タイムズの『民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準』(通称『緑の本』)などの過失相殺基準表を用いて、交通事故の当事者間の過失割合を判断しています。

過失相殺基準表では、まず、「歩行者と車の事故」「歩行者と自転車の事故」「車同士の事故」「バイクと車の事故」「自転車と車の事故」「高速道路上の事故」「駐車場内の事故」などの、類型(基本要素)ごとの基本的過失割合が定められています。そして、さらに事故時の具体的な状況(修正要素)を加味して修正がなされるようになっています。

契約者が事実と異なる説明をしていたせいで、保険会社が、その契約者の言い分を基礎に過失割合を判断しているような場合などが、①の状況です。

また、②のように、被害者に有利な、または、加害者に不利な修正要素につき、保険会社の担当員が、適正な判断ができていない、または、あえて見過ごしているようなケースもあり得るでしょう。

しかし、このように、過失割合を変更できる可能性を正確に判断するには、判例タイムズなどを的確に読み解くことが必要です。これは、なかなか素人には困難な作業といえるものです。

7.過失割合に納得できない場合の対処法

(1) 示談交渉の場で過失割合の変更を主張

保険会社の担当者と示談交渉するときには、とにかく安易に妥協しないということが重要です。

別冊判例タイムズの類型が正しく適用されているか、加害者に不利なまたは被害者に有利な修正要素はないのか、などをご自身で確認した上で、担当者に、どの類型を根拠にしているか、および、どのような修正要素を適用したのか、につき説明を求める必要があります。

その結果、示された事実が納得できないのであれば、さらに証拠の提示まで求めるべきです。

しかし、実際のところ、別冊判例タイムズを見て、的確に似た事例を探し、修正要素の適否を判断することは、専門性に加えて経験がなければ難しい作業となります。

この点においては、交通事故に精通した弁護士に依頼をして手続きを行なってもらうことが賢明だといえます。

また、こちらから主張すべきことがある場合は、それを立証できる証拠を準備しておきましょう。

(2) ADR

もし、示談において話し合いがまとまらなければ、残る紛争処理方法としては、いわゆるADR(裁判外紛争解決手続き)である、交通事故紛争処理機関(交通事故紛争処理センター、日弁連交通事故相談センター)へ、示談のあっ旋を依頼することになります。

どちらの機関も、無料で利用できる、手続きがスピーディーである、非公開手続きのためプライバシーが保持される、といった点がメリットといえます。

ただし、和解あっ旋は、基本的にはお互いが譲り合って納得できる着地点を探る手続きです。

このため、事実関係の対立が大きな場合は、ADRでの解決は難しいでしょう。

(3) 調停または裁判

①調停

調停は、当事者の主張を裁判官と2名以上の調停委員が聞いた上で、双方が納得できる妥協点を話し合いによって探っていくものです。訴訟と比べると、手続き面でも費用面でもコストは低く済みます。

ただし、示談屋ADRと同様に、お互いの譲歩を前提とした解決手段のため、お互いの過失割合の主張がかけ離れている場合には、利用は不適当といえます。

②裁判

示談でも調停でも話し合いがまとまらない場合には、最後の手段として訴訟(裁判)を起こすことになります。

ただし、当事者が訴訟を起こして、過失割合について争おうとすれば、訴状などの書類の準備、立証のための証拠集め、口頭弁論等の裁判手続きを全て1人で行わなければなりません。

実際のところこれを的確に行うのは非常に困難ですので、できれば、訴訟の専門家としての知識を持ち、かつ、交通事故に詳しい弁護士に依頼するのが良いでしょう。

8.交通事故の過失割合に納得できない時は弁護士へご相談を

交通事故の被害者の方々の多くにとって、示談などの手続きは初めての経験です。保険会社の主張に不満を覚えつつも、今までお話ししたような示談のからくりを知らないがため、しぶしぶ受け入れてしまう傾向があります。

しかし、すでに述べさせていただきました通り、保険会社はあくまで営利会社であり、損害賠償金の支払い額を引き下げるためには、いろいろな角度から自社に有利となるよう取り計ろうとします。そして、保険会社の担当者は、示談交渉の専門家ですから、このことにつき、あの手この手で納得させようと交渉してきます。

適正な過失割合で正当な損害賠償を受けるためには、弁護士に相談されることが最も適切な方法です。過失割合に納得できないと感じたら、ぜひ交通事故に精通した弁護士にご相談ください。

弁護士に依頼したのちには、過失割合の交渉だけでなく、保険会社とのやり取りはすべて弁護士に任せることができますから、被害者の方々はストレスから解放され、治療に専念することができます。

また、過失割合をめぐる争いを適切に進められるだけでなく、弁護士が介入するだけで、いわゆる弁護士基準が適用され、損害賠償額が当初の保険会社提示額の2倍、3倍に増額する事例も数多くなります。

泉総合法律事務所は、初回のご相談料を1時間無料で承っております。

交通事故におけるトラブルに関しては、初期の段階で弁護士に依頼することによるメリットも多くあります。交通事故のお悩みにつき、どうぞお気軽にご相談ください。

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