保険会社の対応が悪い!被害者として知っておくべき対処法とは?
弁護士として交通事故の被害者から相談を受けていると、「保険会社の対応」に対する不満を聞くことがあります。
例えば、「対応が遅い」「威圧的な言葉使いをされた」「こちらは被害者なのに、金銭目当ての悪い者のように言われた」「事故状況の認識が実際と違いすぎる」「提示された賠償額が低すぎる」などです。
不満の内容は、示談の中身に関わることから、担当者の態度や言葉使いに至るまでさまざまです。
そこでこのように保険会社の対応に不満を感じたときに、どのように対処したら良いか説明します。
このコラムの目次
1.保険会社は相手方の代理人
まず確認しておくことは、示談交渉の相手となる「保険会社の担当者」は、あくまでも「交通事故の相手方の代理人」であるということです。
つまり、保険会社の担当者と交通事故の被害者とは利害の対立する関係にあるわけです。
さらに、保険会社は、「公的事業」や「慈善事業」で賠償金の支払いをしているわけではありません。
保険会社にとっては、支払うべき損害賠償の金額を安くすることが、会社としての利益につながります。保険会社の担当者も会社の方針に沿って交渉するしかありません。
したがって、被害者であるあなたの言い分に反論したり、あなたの認識とは異なる相手方当事者の認識に沿って示談を進めたりしようとすることは、ある意味当然のことでもあります。
そもそも「交通事故の示談交渉」は、精神的な負担の小さいものではありません。立場や見解に違いがあることは折り込んだ上で示談交渉にあたることが大切です。
こちらが不必要に感情的になってしまっては、保険会社の対応のすべてに不満を感じるようになってしまいます。
2.問題のある対応をされたことを「苦情相談」する
(1) 主な相談窓口
利害関係の対立する相手との交渉だとしても、担当者の態度に行き過ぎがある場合もあるかもしれません。この場合は、保険会社の方針というよりも、担当者個人のモラルの問題といえます。
示談交渉において保険会社の担当者から理不尽な対応をされたときには、次のような対処をすることが考えられます。
- 保険会社の相談窓口(苦情窓口)を利用する
- 金融庁に報告(苦情相談)する
- 「そんぽADRセンター」を利用する
(2) 保険会社の相談窓口を利用する
最も一般的な方法は、相手方の保険会社に「問題のある対応をされたこと」を伝えることです。保険会社は必ず「苦情窓口(相談窓口)」を設置しています。
また、その保険会社の支店の責任者宛に電話などで「苦情」を申し入れたり、「担当者の変更」を依頼したりすることも有効な方法のひとつです。
(3) 金融庁に苦情を申し入れる
次に、保険会社の監督官庁である金融庁に苦情を申し入れる方法があります。
ただし、金融庁に苦情を述べても、その担当者(や保険会社)に対して金融庁が直接指導することは、あまり期待できません。
とはいえ、「金融庁に報告・相談する」というのは、示談交渉で問題のある対応をされた場面や、保険会社に苦情を述べるときの駆け引きの材料としては有効なこともあるかもしれません。
(4)「そんぽADRセンター」
最後の「そんぽADRセンター」は、損害保険について保険会社と顧客との間にトラブルが発生した場合に対応する組織として、損害保険協会が設置している窓口です。
そんぽADRセンターでは、専門の相談員による相談や、苦情対応・和解の仲介を行っています。これらの手続きはすべて無料で利用することができます。
(5) 相談する前に資料を作る
これらの窓口を利用して苦情の申し入れや相談をする際には、保険会社の対応に「問題がある」とわかるような資料を作ることが重要です。
最初に説明したように、保険会社との示談交渉は、利害関係の対立する者同士の話し合いです。
認識の違いなどがあることは、当然でしょうし、思ったように示談が進められないことで感情的になっていると思われてしまうこともあります。
(6) 電話の内容を録音する
示談交渉において問題のある対応をされそうだと感じたときには、電話の内容を録音するなどの措置を講じておくと有効です。
また、「交渉の内容を録音します」を担当者に伝えるだけでも、「丁寧に対応しなければいけない」というプレッシャーを与えることができるので、不快な思いをしないための予防策としても効果的でしょう。
3.保険会社が提示する損害賠償額が低い理由
(1) 提示された損害賠償額が低過ぎる場合
担当者の「対応が遅い」とか「説明が難しくてわからない」、「失礼な態度をとられた」といった問題であれば、苦情の申し入れや担当者の変更依頼といった方法で対処可能です。
しかし、「保険会社から提示された損害賠償額が低すぎるので誠意を感じない」、「事故状況(過失割合)の認識があまりにも実際と違いすぎて許せない」といった不満であれば、苦情の申し入れでは解決できない場合の方が多いでしょう。
提示された賠償額に不満があるから保険会社の対応を不快に感じるということもあるかもしれません。
保険会社が提示する賠償額が低いのには理由があります。交通事故の損害賠償額は、あらかじめ定められた「算出基準」に基づいて機械的にはじき出されることになっています。
たとえば、入通院慰謝料であれば入通院の期間、後遺障害慰謝料であれば認定された後遺障害等級に応じた金額が支払われるのが原則です。
(2) 算出基準は三つある
この算出基準には「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「裁判基準(弁護士基準)」の3つの基準があります。算出される賠償金の額は、自賠責基準が最も低く、裁判基準が最も高額となります。
弁護士を立てない示談交渉の場合には、自賠責基準(もしくは任意保険基準)に基づいて賠償金の額が提示されることが一般的です。
したがって、「提示された賠償額が低い」という問題は交通事故の示談交渉では珍しくないことです。
【参考】交通事故に関する質問「後遺障害慰謝料は弁護士に依頼すると金額が上がるのですか?」
4.保険会社の対応に不満を感じてもやってはいけないこと
(1) 感情的になること
交渉ごとを成功に導くには、冷静でいることが大切です。
利害の対立する相手から意に沿わない対応・提案をされたとしても感情的になってしまうことは避けるべきです。
事故の直接の加害者ではない保険会社に感情をぶつけて、「根拠もなくごねる」ことをしても示談交渉は前に進みません。
示談交渉を有利に進めるためには、保険会社の主張の根拠を確認し、必要な反論を丁寧に行うほかありません。
(2) 明らかに納得出来ないのに妥協すること
他方で、「保険会社がそう言うのなら(納得できないけど)仕方がない」と妥協してしまうのもあまり好ましいとはいえません。
示談は交渉なので100%満足のいく結論が得られないことは、ある意味仕方がありません。
示談を長引かせる手間やコストを考えれば、一定程度妥協した方が、被害者にとっても利益が大きい場合もあるでしょう。
しかし、「明らかに納得できない」場合まで、泣き寝入りする必要はありません。交通事故によって被害を受けた以上は、適正な補償を受ける権利があるからです。
被害者としての考えを、きちんとした根拠に基づいて保険会社に示すことが大切です。
そのために、交通事故の状況や、ケガの状態、治療の経緯などは、記憶があやふやにならないように、メモを残しておくなどの対応をしておくと良いでしょう。
5.保険会社の対応に不満があるときには、弁護士に依頼するのも選択肢
(1) 被害者が自分で示談交渉するのには限界も
ここまでを簡単にまとめておけば、保険会社の対応に不満があるときには、①各種の苦情窓口を活用する、②保険会社の主張の根拠を確認する、③被害者としての主張の根拠を明確・丁寧に説明するといった方法が考えられます。
しかし、苦情窓口での対応には限界があります。担当者の態度(マナー)を超える示談の中身については、苦情窓口では対応できないことの方が多いでしょう。
さらに、保険会社の主張に適切に反論することは、交通事故についての専門知識を持ち合わせていない一般の方にとっては負担が重たい場合が多いでしょう。
また、交通事故によって重篤なケガを負ってしまったときには、示談交渉を自分ですることそれ自体が耐えられない(交通事故を思い出してしまう)こともあるかもしれません。
(2) 示談交渉を弁護士に依頼する
保険会社の対応に不満があるときには、「弁護士に示談交渉を依頼する」のも選択肢のひとつです。
弁護士に示談交渉を任せれば、保険会社とのやりとりを自分で行う必要がなくなります。保険会社とやりとりをしなければ、不愉快な思いをすることもありません。
また、普段の生活や、治療に専念することもできます。
弁護士に示談交渉を依頼するもうひとつの大きなメリットは、「損害賠償額の増額」が期待できることです。
保険会社としても、弁護士がでてくると、「訴訟を起こされる」ことを意識せざるを得ないため、裁判基準に基づいた金額で和解(示談)をまとめることにメリットが生じるためです。
(3) 弁護士費用特約があれば費用はかからない
最近では、自動車保険に弁護士費用特約を付帯している人が増えています。
弁護士費用特約があれば、被害が軽微な(損害賠償額の少ない)ケースでも、弁護士費用を気にすることなく示談を依頼することができます(弁護士費用特約の利用で翌年の保険料があがることはありません)。
6.示談交渉のストレス削減のために弁護士へご相談ください
相手方の保険会社との示談交渉は、利害関係が対立している以上、ストレスを感じることが少なくありません。
どちらも自己に有利に交渉を運ぼうとするのですから仕方のないことです。
示談交渉でのストレスを回避するには、弁護士に示談を依頼することが最も良い方法です。
弁護士に依頼すれば、保険会社との交渉だけでなく、必要な資料(証拠)の収集、後遺障害等級認定に向けた医師への働きかけといった、一般の方には難しいこともすべて適切に行ってもらうことができます。
また、裁判基準での示談交渉となることで、損害賠償額の増額も期待できます。
泉総合法律事務所では、交通事故の相談は初回無料でお受けいただくことができます。
相談の際に、弁護士費用をお見積もりすることも可能です。
交通事故の示談交渉にストレスを感じた、保険会社の対応に不満を感じたときには、泉総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
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