刑事事件

痴漢の証拠には何がある?証言と繊維鑑定と冤罪事件

痴漢は証言のみで逮捕される?証拠や繊維鑑定について

皆さんは、年間でどれくらいの痴漢事件が起きているか知っていますか?

平成18年〜26年の警視庁の統計によると、毎年3500-4000件推移しているのがわかります。

これは犯罪認知件数のため、被害報告がベースとなっています。

性被害者が、警察に報告しない傾向を考えると、実際にはこれ以上の被害があることも考えられるでしょう。

27年度以降の結果は公表されていないため、警察の啓蒙活動等から減少している可能性もありますが、定かではありません。

毎年これほどの被害があること自体にびっくりする方もいるでしょう。

もっとも、逮捕された方が必ず加害者であるとも限りません。少ない数ですが、冤罪もあります。

そこで、ここでは痴漢事件でどのような罪が成立するのか、証拠としてはどのようなものが採用されるのか、冤罪事件の対処法などを解説いたします。

1.痴漢と罰則

どのような行為が痴漢と判断されている?

まず、痴漢行為にどのような犯罪が成立するのかを説明します。また、痴漢と判断される行為についても詳しく見ていきましょう。

(1) 痴漢で成立する迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪

「痴漢行為は、実際のところ何罪が成立するんですか?」

何か罪を犯せば、罰せられる。これは、皆さん共通の認識でしょう。

痴漢行為でも、「どんな罪が成立するの?」と疑問に思う方はいらっしゃると思います。

実際のところ、痴漢行為には刑法上の罪が成立することは少なく、多くのケースでは迷惑行為防止条例違反となります。

この法律は、各都道府県などの自治体が制定している条例であり、地域によって罰則の重さに違いが出ています。

例えば、東京都の例と見てみましょう。東京都迷惑行為等防止条例5条1項1号では、「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」を痴漢行為として禁止しています。

罪は「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」です。常習犯と判断された場合には、これよりも罪が重くなります。

実際には、痴漢行為で逮捕された人の60%程度がこの法律によって処罰されています。

痴漢行為で成立する罪はこれだけではありません。

下着など衣服の上からではなく、直接身体に触れてわいせつ行為に及んだ場合には、強制わいせつ罪(刑法176条)という刑法上の犯罪が成立します。

こちらで起訴される場合は、「六月以上十年以下の懲役」となる可能性があり、迷惑防止条例違反と比べ罪が重くなります。

最近では、強制性交等罪(旧:強姦罪)等の性犯罪等に関する法律が改正され、厳しく処罰する方向になっています。

これまで、強制わいせつを含む性犯罪については、被害者が処罰してほしい旨を申告(告訴)しなければ、起訴することはできませんでしたが、これがなくても起訴できるように改正されたのです。

このように痴漢行為を行えば、迷惑防止条例違反か強制わいせつ罪で検挙されてしまいます。

(2) どんな行為が痴漢認定されるのか

では、痴漢行為として検挙されているのはどのような行為なのでしょうか。

迷惑防止条例違反としては、衣服や下着の上から他人の身体を触る行為です。皆さんがイメージされる通り、電車の中など公共の場所で臀部や胸を触る、撫で回す等の行為があります。

満員電車を利用して、後ろから密着し身体や性器を押し付けるような行為も痴漢として検挙されています。

強制わいせつ罪としては、電車などでスカートの中に手を入れ、直接性器を触る等の行為をした場合が代表例です。

これ以外でも、下着を脱がせようとした行為などは強制わいせつと判断される可能性があります。

最近では、一風変わった事例も報告されています。それは「匂いを嗅ぐ」という痴漢行為です。

女性から被害申告があったことから、警察も不審な行動をする人をよく観察しています。

明らかに女性の背後等に近づき匂いを嗅いでいるような素振りがあれば、警察官が注意することがあるようです。

もっとも、これは直接触れる行為ではないため、逮捕できるかが難しいところです。

ただし、「卑猥な言動」として判断して検挙することは不可能ではありません。

このように、最近ではこれまでとは異なる方法の痴漢行為も報告されています。

2.痴漢行為を認定するための証拠

どんな証拠が有効なのか?

次に、痴漢行為を立件するために、よく利用される証拠についてご説明します。

供述証拠科学的な証拠の2つにわけて見ていきましょう。

(1) 供述証拠

目撃者・被害者・本人の自白

供述証拠とは、事件に関連してある人が話す事実のことです。

痴漢事件なら、「電車の中で加害者が被害者を触る行為を見ました」といえば、それは痴漢事件において重要な証拠となります。

目撃者からの証言は客観的であるため、裁判でも有力な証拠として採用されます。

供述証拠は、他人からの証言だけではありません。被害者からの被害に関する事実の申告も証拠となります。

被害事実に関する供述は、刑事裁判ではほぼ必ず登場するものです。どのような被害を受けたのかを、言葉で表現することで裁判の重要な証拠として採用されます。

また、関係者の供述証拠として一番インパクトが大きいのが、自白です。自白は、証拠の王様と言われるくらい、裁判において大きな意味を有しています。

もちろん、自白であったとしても嘘の供述の可能性はあるため、客観的な他の証拠で補強されていることも重要です。

これらの供述証拠は、それぞれ内容に不自然な点がないかどうかを聴取段階で確認されることになります。

不合理な点があれば、証拠としての信用性は低くなるでしょう。特に、途中で主張を変えるようなことは、証言に変化が見られるため、信用性は低くなります。

痴漢事件の場合、目撃者の証言があっても、実際に検証してみると犯人の位置からでは犯行が不可能であったという場合は、証言の信用性が低くなります。

また、被害者の話でも、犯行の内容が曖昧であることや、最初と言っていることが異なるケースでは証拠の価値が下がります。

逆に、被告人が公判廷で自白を翻したような場合は、これまでの自白内容が不利に働くこともあるでしょう。

このように、裁判では事実に関する供述が有力な証拠となります。

(2) 科学的な客観的証拠

繊維鑑定、DNA鑑定、防犯カメラ

痴漢事件でよく行われる証拠採取方法としては、繊維鑑定があります。

繊維鑑定とは、犯人とされる人物の指に付着した繊維を採取することで、被害者の下着の繊維と一致するかを判断する方法です。

被害者の下着と同じ繊維が指に付着していれば、有罪の証拠として認定される可能性は高くなります。

一方、繊維の付着がなかった場合は、無罪の証拠として利用できるでしょう。

実際のところ、女性の下着の繊維は同じような種類のものも多くあり、繊維が付着していたからといって必ず痴漢行為があったと判断することはできません。

冤罪を防ぐためにも他の証拠も含めて総合的に判断していく作業が重要なのです。

繊維鑑定より有力な証拠といえるのは、DNA鑑定です。犯人の指等から被害者の体液が採取されれば、より直接的な証拠となりえるでしょう。

強制わいせつ事案では、これが採取されなかった場合には、無罪を主張する材料となります。

DNA鑑定の精度はかなり高いといえますが、数十年経ってから冤罪とされる事案が発覚することもありました。そのため、現在では慎重な捜査と証拠認定が行われています。

これら以外でも、防犯カメラの映像で、痴漢行為を行っている映像が映っていれば決定的な証拠となりえます。

もっとも、満員電車内では、痴漢行為がはっきりわかる映像を撮影することは難しいため、被害者と犯人の立ち位置などを判断する資料として利用されています。

このように、痴漢行為を立証するためにはさまざまな証拠が利用されています。証言だけでなく、科学的な証拠も含めることで、総合的に有罪華道家の判断が下されます。

3.痴漢冤罪で逮捕された場合の適切な対応方法

最後に、痴漢の冤罪事件に関するお話をお伝えいたします。逮捕された後の対処法も見ていきましょう。

(1) 痴漢の冤罪は実際にあるのか

「それでも僕はやってない」という映画は公開当初、世間を驚かせました。

痴漢として逮捕され、起訴されると90%以上有罪となってしまうという事実を突きつけ、冤罪という社会問題にも焦点を当てたのです。

実際に、痴漢として被害申告があったが冤罪だったという事案はあります。

よくあるのは、被害者が別の犯人と勘違いしていたというケースです。被害は事実であるものの、犯人を間違えてしまうというケースは、実際にあり得る話です。

悪質なケースでは、お金をとるために痴漢行為で何もしていない相手を脅すという事件もありました。

痴漢といえば絶対悪だったのが、映画や実際の恐喝事件をきっかけに「冤罪もある」という認識が広まったといえるでしょう。

最近では、2012年に痴漢行為の疑いで逮捕され冤罪を主張し釈放、その後自殺した事例がありました。

実際に冤罪だったのかはわかりません。しかし、潜在的に冤罪である可能性のある事件であることは否定できないのです。

痴漢行為は非難されるべき犯罪です。被害者のお気持ちを考えると、計り知れない苦しみがあるでしょう。

しかし、少なからず冤罪もあります。起訴されれば高い確率で有罪となることも事実であり、慎重な捜査が行われるべきです。

(2) 冤罪のケースの対処法

逮捕後は、絶対に自白しないこと。

「実際には痴漢行為はやっていないのに、疑われ逮捕されてしまった…」

このような状況に直面した時、覚えていてほしいのは、「やってない」と主張し続けることです。

捜査官は基本的に痴漢行為があった前提で話を進めていきます。被害者から申告があれば、「犯行はあったのだろう」と仮定して動いているのです。

そのため「白状しろ」と強引に自白に誘導されてしまうことがあるかも知れません。

辛い状況に陥ってしまった場合でも、やっていないことを「やった」ということは絶対にやめてください。やっていないことを主張し、できるだけ早く弁護士と連絡をとりましょう。

痴漢事件では、「証拠は被害者の供述だけ」というケースも少なくありません。この場合は、被害者の供述に曖昧さや不明な点が多いと、証拠不十分となるケースもあります。

できるだけ早く弁護士と接見し、アドバイスを受けることが大切です。

やってもないことを自白すると、後から信用を取り戻すのが難しくなってしまいます。

4.痴漢事件に巻き込まれたら弁護士にご相談を

痴漢行為で捕まってしまい、一刻も早く釈放されたい場合は、できるだけ早く弁護士にご連絡ください。

刑事事件になると、その人の一生に関わる可能性があります。できるだけ早く対処を行い、将来への影響を少なくすることが大切なのです。

また、やっていない罪で逮捕されてしまったら、罪を認めないようにしてください。

警察官から、あたかも犯人ように扱われてしまうかもしれません。しかし、一度でも犯行を認めてしまうと、今後の裁判の展開で不利になります。

弁護士と接見するまで踏ん張ることも大切です。

泉総合法律事務所では、刑事弁護も数多く取り扱っています。豊富な経験から、痴漢事件を全面的にサポートいたします。

ご家族の方も突然のことで動揺していらっしゃることでしょう。そんなときこそ、お早めに弁護士にご相談ください。

無料相談受付中! Tel: 0120-700-496 平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
0120-700-496
平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
メールでお問い合わせ